突然ですが、質問です。(1)お店で万引きしたソフトをインストールして使う(2)購入したソフトを複数の(ライセンスで許されている以上の数の)PCにインストールして使う。この2つを比較したとき、あなたはどちらのほうが罪が重いと思いますか?
こう質問されたら、おそらく(1)と答える人が多いだろう。ほとんどの人が(2)より(1)に、より罪悪感を覚えるのではないだろうか。
万引きしたソフトを使った場合の刑事罰は窃盗罪に相当するため、10年以下の懲役または50万円以下の罰金。一方、著作権侵害の行為者に対する刑事罰(1本のソフトを、ライセンスで許されている以上の数のPCにインストールした場合の罪はこれに相当)、懲役が10年以下、罰金は1000万円以下(併科あり)となっている。併科とは、「両方が課せられる可能性があること」。つまり万引きの場合は懲役か罰金のどちらかで済むが、著作権侵害の場合は懲役と罰金の両方を課せられる可能性があるということだ。また、罰金の上限も著作権侵害のほうが高い。つまり冒頭の質問の答えで、より罪が重いのは、(1)よりも(2)なのである。
個人で好んでそのようなことをしなくても、企業で組織的にPC用ソフトを使い回すことがある。例えば、業務に使うPC用ソフトをCD-Rに焼き、1つのシリアルナンバーで複数の社員のPCにインストールする、といったケースだ。
この場合は、行為者(ソフトをインストールするよう命じた人と、実際にインストールした人)と、企業/団体の両方に刑事罰が科せられる。行為者については上記の通りだが、企業/団体に対して課せられるのは3億円以下の罰金。著作権侵害の罪は、多くの人が思っている以上に重いのが現実なのだ。
こういったPC用ソフトの使い方や、違法海賊版ソフトウェアの販売・使用をまとめて「(組織内)違法コピー」と呼ぶ。ビジネスソフトを中心に、PC用ソフトの違法コピー情報を調査・分析している団体がビジネスソフトウェアアライアンス(BSA)だ。アドビやマイクロソフトなどのソフトウェアメーカー、デルやインテルといったハードウェアメーカーがメンバー企業として名を連ねている。
BSAによれば、2009年、世界の違法コピー率は43%、違法コピー損害額は514億ドル(約4兆8000億円※、参照リンク)。
日本の違法コピー率は21%と低く、世界で2番目に良いのだが(1位は米国の20%)、損害総額で見ると、世界ワースト8位の約1700億円(18.38億ドル)となっている。高額なソフトの利用が多い、PCが広く普及しており利用台数が多い、というのがその理由といえそうだ。
組織内違法コピーの通報数を業界別に見ると、1位ソフトウェア関連、2位マスコミ関連、3位建設・不動産関係がワースト3(2009年)。民間企業だけではなく、地方自治体を含む公共関連も2008年はワースト3、2009年はワースト5に入っている。
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