通信社を退社し専業作家になってからも、気味の悪い事態には何度も遭遇した。他の作家仲間も頻繁に被害に遭っているのが次のようなケースだ。
『作中のキャラクターは自分がモデルになっている。無断で盗用するのはけしからん』というたぐいのもの。もちろん、筆者あるいは友人の作家たちはこうしたクレームをつけてくる人物とは全く面識がないのは言うまでもない。
また、筆者が作中で電子部品のたぐいを登場させたところ、「自分が開発した部品を許可なく引用した」などと執拗(しつよう)なクレームが続き、あげく迷惑メール攻撃にさらされたこともあった。
筆者はほかにも、金融技術に長けた暴力団関係者や某国の防諜関係者を小説に登場させたことから、嫌がらせのメール、無言電話などの被害にも遭った。また、筆者が創作したキャラクターに一方的な恋愛感情を抱き、筆者に対してあれこれとキャラクターの造形を指示する“熱心”な読者も少なくない。
今のところ、筆者は警察に相談するような深刻な事態には遭遇していない。だが、筆者は家族持ちの身でもあり、故村崎氏が被害者となった事件に対しては、神経質にならざるを得ないのだ。
作家やジャーナリストに対する暴力行為では、ノンフィクション作家の溝口敦氏、ご子息に対する襲撃事件が発生したほか、繁華街のディープな取材に定評のあったライターが不審死を遂げるなど、ここ数年で多数の被害者が出ている。事件化しなかったものの、知人のライターがその筋の方々に監禁されるような事態も少なくない。
筆者はキレイごとや青臭い事を主張するのは大嫌いだが、「言論」や「表現」を巡って怒りや憤りを感じたとしても、これを暴力という形に転化させ、反撃に移すことだけは絶対に看過できない。
故村崎氏のご冥福を改めてお祈りするとともに、今後、同様の事件が再発しないことを願うばかりだ。
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