風力発電のメリットとデメリット松田雅央の時事日想(3/4 ページ)

» 2010年07月27日 08時00分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]

CO2削減効果

 さて、実際にアルファ・ベントスで発電される電力とCO2排出削減効果はどれほどのものなのだろう。

 合計出力60メガワットは最も理想的な風が吹いた場合の定格出力であり、当然、365日を通してこの出力を出せるわけではない。考え方としては、風の弱い日、風の強い日、あるいは風が強すぎて風車の回転を止めなければならない日など1年を通して平均化し、計算上「定格出力換算で何時間稼働するか」となる。

 陸上の場合はこれが3000時間以下となるが、洋上は風の条件がいいため3800時間程度を達成できる。従って発電量は以下の通り。

60メガワット×3800時間=22万8000メガワット時

 家庭の電気消費量は1人当り年間約1メガワット時なので、アルファ・ベントスだけで22万8000人が家庭で使う電力を供給できる規模だ。

 石炭火力発電所では1メガワット時の電力を得るのにおよそ1トンのCO2を排出するから、これと比較するとアルファ・ベントスは年間22万8000トンのCO2削減効果がある。

 ドイツ政府が掲げる目標「2030年までに2万5000メガワットの洋上発電」を達成するためには、アルファ・ベントスと同規模の風車を5000本建設しなければならない。これが実現すると年間発電量は95テラワット時となり、国内電力需要のおよそ15%をまかなえる計算だ。

巨大風車の据え付け作業(出典:Deutsche Offshore-Testfeld und Infrastruktur GmbH & Co. KG)

風力はエコロジカルでエコノミカル?

 風力エネルギーはエコロジカルである。火力発電などと比較すればこの定義は正しいのだが、風車の数が5000本となれば話はまた別だ。

 事業者側は環境安全性を強調する。すでにデンマークで稼働している洋上ウィンドファームのデータを基に、洋上を飛ぶ渡り鳥が風車に衝突する可能性は低く、風車の騒音・低周波音の影響についても問題がないという。

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