紀州南高梅を引き出物や香典返しに!? 販売チャネルを革新せよ――勝喜梅・鈴木崇文さん(後編)嶋田淑之の「この人に逢いたい!」(2/5 ページ)

» 2010年07月23日 08時00分 公開
[嶋田淑之,Business Media 誠]

葬儀業界、マッサージ業界にもチャネル開拓

 ブライダル業界にチャネルを開拓したのと同時期、鈴木さんは、今度は、何と葬儀業界にもチャネルを構築し、世間をあっと言わせる。

 「香典返し(当日返し)にぴったりだと思ったんですよ。何でか分かります?」、そう言ってニヤリと笑った鈴木さんは、またまた意外な、しかし極めて筋の通った説明を始めた。

 「故人の思いとして、生きている人に対しては、末永く元気で長生きしてほしいと思っていると、私は考えたんです。そうだとすれば、健康増進効果のある梅干は、ぴったりの存在じゃないですか?」

 そして、こう付け加えた。

 「世の中には“タンスで眠るものベスト10”と呼ばれるものがあります(笑)。それには、実は仏事でもらったものが多いんですよ。砂糖やお茶、のりやコーヒーなど……。だから、そういう意味でも、実用性の高い、そしておいしい南高梅を差し上げたら、どんなに喜ばれるだろうと思ったのです」

 葬儀業界としても「業界始まって以来」と言われた出来事だったそうだが、結果は上々で勝喜梅の売り上げの中でも、この香典返しが今、一番伸びているという。鈴木さんのアイデアの泉は枯渇知らずだ。さらなる一手を打ち出してくる。

 「私はよくマッサージの施術を受けに行くんですよ。でも、行ったその時はちょっと楽になるものの、根本的には良くならないなあ……と常々感じていたんですね。それで、本当にカラダのことを考えるのであれば、カラダの内側から良くするようにした方がいいと思ったんです。そういう意味で、梅干を食べれば血流も良くなるし、ぴったりだと思って、マッサージ店に施術後のお茶受け用に置いてもらおうと考えたのです(笑)」

 そして、これと同様の発想に基づいて、フィットネスクラブに梅干を置いてもらうことを現在、鋭意推進中とのことである。

チーズ、そしてブリザードフラワーともコラボ

 鈴木さんと勝喜梅の快進撃はさらに続く。それは、カリスマ・シェフとのコラボレーションだった。

 東京・中目黒にある日本料理店「花冠」。ここは、料理長・松本栄文氏のお任せコースだけを出すお店なのだが、松本氏はコース最初の品として、「ガンジーミルクチーズとはちみつ漬け南高梅」というメニューを考案(下写真)。いろいろなはちみつ漬けを試した結果、勝喜梅の商品を選んだのだ。

ガンジーミルクチーズとはちみつ漬け南高梅

 「(勝喜梅のはちみつ仕立ては)果糖の割合が多いので、まろやかなさっぱりした味わいが出ています。はちみつ梅干を食べた後のべったりした感じがなく、クリームチーズのさっぱり感とプラスして一番ぴったり合う梅干でした」と松本氏はWebサイトで語っている。

 松本氏は「独自」「異質」「新規」な価値創造という点において、鈴木さんと双璧をなす人物であるようだ。世界でも稀少な「ガンジーミルクチーズ」と、紀州南高梅の「特A」クラスによる「はちみつ仕立て梅干」という想像を絶する組み合わせ。この両者が生み出した新しい味の世界は、多くの食通に衝撃を与えたようだ。

 勢いに乗った勝喜梅では、社内のスタッフからも驚きのアイデアが出てきた。それは花屋さんとのコラボレーションだった。

 「若い女性スタッフで、ずっと以前から『花屋さんとやりたい』と言っていた子がいまして、その熱意が実りました」

 それは装花大手「日比谷花壇」とのコラボレーションによる「母の日ギフト」だった。梅干を和紙で包み、そこに花の鮮やかな色彩をそのまま残せるプリザーブドフラワーを添えた「プリザーブドフラワーと梅づくしのセット」だ(下写真)。

 勝喜梅の田中さや香さんが「娘目線」で考案したというこの商品は、「半永久的に残る美しい花」と「健康の代名詞ともいえる梅干」を同時にプレゼントできれば、母の日に「これからもずっと美しく健康で……」という感謝の思いを伝えられるのではとの気持ちから生まれたものだという。そんな彼女の思いが伝わったのか、ネット通販のみの発売だったこの商品はゴールデンウィーク後、一挙に完売したという。

プリザーブドフラワーと梅づくしのセット

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