コラム
» 2010年07月22日 08時00分 UPDATE

相場英雄の時事日想:“危険なリーク”が、あちらにもこちらにも (1/3)

「リーク」といえば、政府当局や企業が自身の意図する方向に記者を誘導するために行う、といったイメージを持つ人も多いはず。しかしその一方で、当事者が意図しない形で情報が漏れてしまうケースがあるのだ。

[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『株価操縦』(ダイヤモンド社)、『偽装通貨』(東京書籍)、『誤認 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo


 当コラムでは、過去何度かに渡って記者とリークの関係について触れてきた(関連記事)。これまでは、政府当局や特定企業が自身の意図する方向に記者を誘導するリークについて、その危険性について指摘してきた。今回は当事者たる当局者や企業が意図しない形で情報が漏れてしまうケースとそのリスクの高さに触れてみたい。

危険なリーク

 「日銀短観」をご存じだろうか。日本銀行が四半期ごとに発表する「全国企業短期経済観測調査」のことだ。日銀が全国の大企業、中小企業を多数カバーして景況や資金繰りなどを詳細に調査することで定評があり、国内総生産(GDP)と並ぶ主要な経済統計の1つだ。

 当然、日銀短観は外為や債券、株式市場で第一級の材料となる。データは厳重に管理されるのは当たり前で、報じる側の記者も会見室に缶詰となり、解禁時刻までは外部との接触が完全に遮断された(筆者が現役当時)。

 が、1990年代の後半のある時期、あろうことかこの短観の主要データが発表前に市場や一部の速報メディアに漏れ出すケースが数回続いたのだ。もちろん、生き馬の目を抜くような金融市場は即座に反応し、乱高下を繰り返した。悪いことに、漏れ出した中身が実際に日銀発表データと全く同じことだったことで、金融市場はもとより、発表元の日銀も犯人探しに躍起となる一幕があった。

 数度の騒動を経たのち、日銀がとった対策は発表時間の変更だった。それまでは金融市場がオープンした後に短観が発表されていたが、この騒動を経てからは、午前8時50分に変更されたのだ。

 筆者や同僚が調べたところ、データ漏洩の犯人は某政府関係者。日銀が短観発表日に開催する重要会議に出席していた人物だったのだ。

 従前はこの会議を経てから短観が発表されていたが、「犯人がある程度絞り込まれた段階で発表時間を変更したら、一切漏れなくなった」(当時の幹部)。この政府関係者が金融市場関係者と結託していた、あるいは自身で株式のポジションを持っていたかは定かではないが、日本を代表する重要経済指標が漏れてよいはずがない。犯人を特定した、あるいは漏洩があったという事実を日銀は公表しなかったが、裏側ではこんな危うい事態があったのだ。

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