チキン戦争勃発、勝つのはマックかケンタか?それゆけ! カナモリさん(1/2 ページ)

» 2010年07月21日 08時00分 公開
[金森努,GLOBIS.JP]

それゆけ! カナモリさんとは?

グロービスで受講生に愛のムチをふるうマーケティング講師、金森努氏が森羅万象を切るコラム。街歩きや膨大な数の雑誌、書籍などから発掘したニュースを、経営理論と豊富な引き出しでひも解き、人情と感性で味付けする。そんな“金森ワールド”をご堪能下さい。

※本記事は、GLOBIS.JPにおいて、2010年7月16日に掲載されたものです。金森氏の最新の記事はGLOBIS.JPで読むことができます。


 7月8日、渋谷の公園通りにケンタッキーフライドチキンの次世代店舗がオープン。すぐ隣にはマクドナルドの次世代店舗があり、7月2日からマクドナルドではチキンの新メニューの販売が始まっている。「チキン戦争」の象徴的な光景だ。

 そもそも、チキンメニューはBSE問題以来の牛肉離れや、世の低価格志向、健康志向に後押しされてここ数年、人気の高まりを見せている。低価格でボリュームが得られて、かつ、肉としてはローカロリーだからだ。ファミリーマートの「ファミチキ」に代表されるように、コンビニ各社は店内調理メニューとしてチキンを強化している。牛丼のなか卯もサイドメニューとして鳥の唐揚げを発売している。ほかにもオリジン弁当がから揚げ激安の日を設定したり、ほっかほっか亭が唐揚げ弁当の値引きをしたりという動きが見られる。

 ケンタッキーフライドチキンの意図は明確だ。同社は今年日本上陸40周年。それを機に「オーブンローストチキン」というノンフライのメニューを開始した。特別な調理器を使うため、まだ渋谷公園通りの「次世代店舗第1号店」のみだが年内に100店を展開するという意気込みを見せている。

 一方のマクドナルドは、7月に一気に3商品を投入。パリパリした薄い衣が特徴の「チキンバーガー ソルト&レモン」は、従来のフライ系だが、ソースに凝ってさっぱりした味わいに仕上げた自信作となっている。サイドメニューも従来のナゲットに加えて肉感を高めた「ジューシーチキンセレクト」を発売して充実させた。さらに7月16日には「チキンバーガー オーロラ」の販売も控えており、まさにチキン一色となる。

 実は「チキン」をめぐる戦場の中で、マクドナルドは日本の「チキン販売量第1位」なのだ。そのシェア16.3%。しかし、日本マクドナルドの原田泳幸社長は、「チキン市場3950億円のうち、マクドナルドは640億円。すでに16.3%のトップシェアを持っているが、まだマクドナルド=チキンという認知がされていない」(J-CASTニュース6月20日)と製品発表会で述べている。つまり、今回の新製品で「チキンを食べたい」と思ったらまず、「マクドナルド」を思い出すというTop of mind(第一想起)のポジションを獲得するのが狙いなのだ。

 クープマンの目標値で考えればマクドナルドの現在の16%強というシェアは、多数のプレイヤーがひしめき合っていて、いずれも安定的なシェアを占めることができていない状態を示している。そこから頭一つ抜け出した市場ポジションである「市場影響シェア」=26.1%を獲得しようというという意図がうかがえる。

 記者会見では原田社長が「チキン市場3950億円のうち、マクドナルドは640億円」と言っている。そこから10%押し上げるとすれば、メニュー平均単価300円とすれば、チキンメニュー約1億3000万食を販売することになる。そのシナリオの切り札が「試食キャンペーン」だ。

 同社は発売1カ月前の6月4日から、「チキン宣言! おいしさ実感1000万人のお試しキャンペーン」を展開している。各種の新メニューを一口サイズのお試しで提供。7月には実施店舗限定ながら商品を丸々配布するTwitterとUstream連動イベントを展開する。大人気になった限定メニュー・ビッグアメリカもTwitterで大きな盛り上がりを見せたが、さらにそれを上回る話題作りを狙っていることが分かる。

 マクドナルドがキャンペーンで使っている動画を見て欲しい。原田社長が「クォーターパウンダーを超えるだろうと予想している」(同)という本気度がひしひしと伝わってくる。

Chicken Fever in Fukuoka

 こうして見てくると、果たして迎え撃つケンタッキーは大丈夫なのだろうかと心配になってくる。「ケンタ逃げてー」という感じだが、逃げ切るにはまず、ターゲットのすみ分けが重要だろう。

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