淘汰されないために! ”Must”と”Nice to have”の違いちきりんの“社会派”で行こう!(2/3 ページ)

» 2010年07月19日 08時00分 公開
[ちきりん,Chikirinの日記]

もちとの違いは危険度ではなく必要度

 危険でも必要性の高いものは、「なくそう」ではなく「なんとかしよう」という議論になります。交通事故数はずっと減少傾向にありますが、この背景にはシートベルトやエアバッグなど安全策の強化や、飲酒運転や違反の取り締まり強化など、さまざまな施策がありました。自動車が危険なことはみんな知っていますが、なくせないこともまた分かっています。だから「何とか共存しよう」という話になります。

 もちも同様で、正月前になると「のどに詰まらせないように気を付けましょう」というキャンペーンが行われたり、詰まった時の応急措置などがテレビで取り上げられます。危ないのはみんな分かっているけど、もちはなくせないので、少しでも気を付けましょう、という話です。

 そういうわけで、当時は「より危ないと思われるもちが販売中止にならないのに、なぜこんにゃくゼリーだけ責められるのか?」「もちとこんにゃくゼリーはどちらが危険か?」という議論が盛り上がり、お役所では本格的な調査まで行ったようですが、ちきりんはこの議論にあまり関心が持てませんでした。

 たとえ「もちの方が危ない」と科学的に証明されても、この国でもちが製造中止になることは考えられないし、「より危ないもちが売られているのだから」という理由でこんにゃくゼリーへの批判が止まるとも思えなかったからです。この2つは危険度ではなく、必要度が違うのです。

食品(群)別一口当たり窒息事故頻度(ケース1は救命救急症例371例をもとに推定、ケース2は内閣府国民生活局によって把握された窒息事故死亡症例の実数をもとに推定、出典:食品安全委員会)

行き過ぎた規制への懸念

 ところで、こんにゃくゼリーを製造中止に追い込むことは、ちきりんもばかげた行為だと思っています。「子どもがけがをした」といって公園の遊具を撤去し、「危ないから」と入って遊べる川や海を減らしていった結果、今や都市部では簡単な花火ができる公園さえ探せないほどです。

 万が一のことがあると責任を問われる行政側が先手を打って規制するのでしょうが、これが民間の商品にまで適用されれば、次々にヒステリックな“●●狩り”が行われないとも限りません。製造中止のきっかけになった死亡事例では「凍らせたこんにゃく入りゼリーを、祖母が1歳9カ月の男児に与えたところ、のどに詰まらせた」とありますが、凍らせて食べるなんてメーカーが推奨している食べ方とは異なるはずです。それでも非難されるべきは消費者ではなくメーカー側なのかと疑問に思います。

 高度に発達した資本主義国では、世の中に存在する商品やサービスの大半は“Must商品”ではなく、“Nice to have商品”です。それらの商品やサービスが、ごく一部の特殊な事故のために社会から抹殺されるのが適切とは思えません。ただ、“Must商品”と“Nice to have商品”では、死亡事故が起きたときのとらえられ方がまったく違うということは理解しておく必要があると思います。

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