あなたの周りにもいるはず 憂うつなバブル世代と貧乏くじの30代吉田典史の時事日想(2/3 ページ)

» 2010年07月16日 13時53分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

 だが、こういう人たちはいつの時代にもいたのではないだろうか。そこで考えるべきは、この調査を実施したリクルートワークス研究所の所長である大久保幸夫氏の指摘である。「1980年代には、30代後半から40代前半がもっとも仕事に対する職務満足度や職場満足度が高まるといわれていた」「近年の調査では、(中略)ミドルマネージャーになった当初よりも、経験を重ねた後に成長実感が低下する人が多い」(「日本の雇用」講談社現代新書、165ページより抜粋)。

 これらを踏まえると、いまのミドル層はそれ以前の世代よりも働きがいなどを感じていない傾向が強いと言えるのではないか。このとらえ方は、私も同じくである。自分と同世代である40代と、自分がかつて仕えた上司の世代、つまり団塊の世代と比べると、40代の方が仕事や会社について不満を口にするのが多いと感じる。

 もちろん、いまの20〜30代も賃金が伸び悩むなど、不満を抱え込むことはあるに違いない。しかし若い世代は、ある程度、自身の未来を描くことはできうると思う。確かに今後は管理職になる人が一段と少なくなるので、未来が明るいとは言えない。だが、40〜50代の頭打ち状態よりは多少、良くも悪くも未来が見えているのではないか。

 いまの40〜50代はなぜ不満を強く述べたがるのだろうか。それには、前述の編集者が言っていたことが参考になるかもしれない。これに近いことは、私の周囲の40〜50代前半までくらいの人が口にする。

 「今後のメドが立たない。昇進・昇格なし。昇給もない。飼い殺しのような日々」「会社の慣例で、50歳で役職(編集長を指す)を解かれる。60歳までの間、やることがない。スポーツ新聞を読むだけの日々になる」

 要は、3〜15年後の将来が見えないのだろう。それ以前の世代、例えば、団塊の世代などはその意味では優遇されていたと言えるかもしれない。多くの会社が1980年代後半に、この世代のために大量に役職(ポスト)を作ってきた。

 しかし、いまは総額人件費を削る考えが強く、ポストが増えることはまずない。昇格・昇進・昇給の可能性は少ないと思ったほうがいい。一方で、リストラは広がる。しかし、安易に会社を離れることはできない。家やマンションのローンに加え、かわいい娘や息子の学費を払わないといけない。

 こうしてこの世代の多くが、“守り”の姿勢に入り、いまの職場にしがみつく。総務省の労働力調査(2008年)によると、45歳から54歳までの間で転職をした人は全体の2.5%にすぎない。さらに困ったことに、この世代には依然として管理職になることができない人がいる。この「40〜50代の平社員」は、前述の編集者よりもやる気がないのかもしれない。

 多くの企業がバブル期に極端とも言える大量新卒採用を行った。20年経ったいまも、余剰人員は多い。そして65歳定年が主流になれば、20〜30代はあと20年ほどの間、このあふれかえった世代と机を並べて仕事をしていくことになる。

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