人生は“一点豪華基準”で行こうちきりんの“社会派”で行こう!(3/3 ページ)

» 2010年07月12日 08時00分 公開
[ちきりん,Chikirinの日記]
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今は一点豪華基準で選びやすくなった

 今は昔より一点豪華基準で選ぶことがたやすくなりました。昔は、大事なことは自分だけではなく、親の意見や家族の事情も踏まえて決める必要がありました。例えば、「長男だから東京に出て行くのはだめ」と言われれば、その場合の一点豪華基準は「地元の仕事であること」となってしまいます。親が大事と思う基準と自分がそう思う基準が、相反する場合も多かったでしょう。

 でも、今は「長男なんて関係ない。俺様基準で生きさせていただきます」という子も、「自分で考えて好きな道を選べばよい」と言ってくれる親も増えています。また、「欲張りません。僕の欲しいのはコレだけだから」と割り切れる人も多く、「選ぶとは捨てることだ」ということも理解されてきたように思います。

 そして、実際に一点豪華基準で働き方を決める人も増えているでしょう。例えば、「フリーのプログラマーです」とか「独立して自営業を始めました」という人がそれを選んだ基準は“自由度の高さ”という一点なのではないでしょうか。

 もし、「安定性も気になる」「給料も一定以上でないと……」「世間体が……」などと言い出したら、なかなかそういう働き方は選べません。一方、「とにかく縛られたくない、あーしろ、こーしろと言われたくない。服装まで指示されるなんてまっぴら」というように、「誰からも指示されない」という点のみを基準にすれば、独立はごく自然な選択となります。

 もちろん、新卒の時には「自分にとって何がどれくらい大事か」が分からない場合もあるでしょう。でも、一度就職して、働き始めると「自分はこれだけは譲れない、(もしくは)耐えられない」ということが一気に明確になる人もいます。就職して数年以内で辞めることを否定的に言う人もいるようですが、“自分にとっての一点豪華基準”が理解できたということであれば、それは決して悪いことではないでしょう。

一点豪華基準は“生き方の多様化”につながる

 さらに突き詰めていけば、一点豪華基準で判断をすることは、“生き方の多様化”につながります。「あなたにとって、仕事を選ぶ際に大事な基準を10個挙げてください」と尋ねると、恐らくみんな同じような10個の基準を選ぶでしょう。

 しかし、「あなたにとって最も大事な基準を1つだけ選んでください」と尋ねると、10人が同じ基準を選ぶことはないはずです。それぞれの人がバラバラの“自分にとっての一番”を挙げることになります。そうすると全体としては多様な基準に基づいて、つまりバラバラの基準で生きる人たちが出てきます。

 ひいてはそれが、“社会の多様性”“選択肢の多様性”“価値観の多様性”につながります。そして、私たちはそういう多様な選択肢がある社会こそを“豊かな社会”とか“成熟した社会”であると感じ始めているのではないでしょうか。

 というわけで、「自分にとっての一点豪華基準」を見つけましょう。そして、「ほかの人とは違っていても、自分としてはとても満足できる」という生き方を見つけていきたいものです。

 そんじゃーね。

著者プロフィール:ちきりん

関西出身。バブル最盛期に金融機関で働く。その後、米国の大学院への留学を経て現在は外資系企業に勤務。崩壊前のソビエト連邦などを含め、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。Twitter:@InsideCHIKIRIN

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