神保町「古書大入札会」で電子書籍の未来を考えた郷好文の“うふふ”マーケティング(2/3 ページ)

» 2010年07月08日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

目利きがいるからこそ

 胸をワナワナさせて、古書会館を後にした。神保町の裏手の交差点で信号待ちで立ち止まった。

 「いったい何がすごいんだろう」、私がつぶやいた。

 「目利き、なんじゃないだろうか」、林田さんが言った。

 そうなのだ、“価値が分かる人”がここにはいる。なんでも鑑定団で初めて価格が付くような暮らしのアートに、いともたやすく価値を付けられる人たちが古書会館に集まっている。

 価値を付けるだけではない。古書の目利きたちは、品を見出し、値を付け、再販の“価値連鎖サイクル”を作っている。古書のコンシェルジェなのである。

 入館前に私たちが心に秘めていた仮説は次の2つだ。

仮説1 デジタル時代には古書が亡くなる

仮説2 だがデジタルの力で古書の再発見ができる

 仮説1は、電子書籍で出版・印刷・図書館業界が揺れていることが背景にある。揺れの元は新刊本に限ったことではない。物理的な本が減れば、古書も必ず減っていく。デジタル再現で本が“劣化”しない時代には、“古書”という概念が亡くなる。古書ビジネスはその時、どうなるのだろうか? CDショップと同じ道のりにある。

 仮説2は、ならば「むしろ電子化の力を借りて、古書ビジネスに新たな地平線を切り開けないだろうか?」という提案。中古本チェーンの“大量仕入れ・大量販売”の値付けから、せめて価値のある本だけは正当な流通がされないだろうか? 本好きの悲痛な叫びでもある。

 2つの仮説はパラドックス(逆説的)にも見えるが、実は“目利き”を真ん中にすえることで、両方解決できる。

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