暴力団を排除すれば……芸能界にも“飛び火”するかもしれない相場英雄の時事日想(2/2 ページ)

» 2010年07月08日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]
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芸能界はどうなる?

 「角界とマル暴の問題はどこまで発展するのか」――。

 角界が大揺れしていた最中、筆者はあるテレビ局関係者からこんなことを聞かれた。この関係者はドラマ制作に携わっており、角界の騒動をしきりに気にかけていた。筆者は、警察庁の安藤隆春長官が暴力団との対決姿勢を鮮明にしていることを説明し、以下のような同長官発言を知らせた。「単に相撲界の事案にとどまらず、現在推進している社会全体で暴力団を排除していく取り組みの重要な一環ととらえて対応してまいりたい」(6月17日、会見での発言)。

 なぜこのテレビ関係者が角界の騒動を気にかけていたかといえば、「ドラマ制作に絶対不可欠な芸能界も暴力団との根深い関係がある」からに他ならない。

 テレビ関係者が一番気にしていたのは、相撲協会の所管官庁である文科省が同協会の公益法人としての資質を問題視したことにある。

 この関係者が勤務するのは民放テレビ局であり、れっきとした株式公開企業。このため、「問題がこちら(芸能界)にも飛び火した場合、どう対応すればよいか対応策を検討している」というのだ。角界のように謹慎者が相次いだ場合、「ドラマなど制作できなくなる」との危機感があるためだ。

 筆者は芸能界の事情に疎い。取材経験も皆無だ。ただ、金融界の裏事情を取材する過程で、一部の芸能事務所、あるいはその背後に控える反社会的勢力の存在を知る機会がなんどもあった。先のプロレスに関する経験則に照らせば、なるほどとうなずける部分が多いのだ。

 筆者は芸能界すべてが反社会的勢力とつながっていると断ずるつもりは一切ない。加えて、テレビ局が支払ったギャラが闇社会に直接還流していると証明する手立てもない。ただ、「ギャラの多寡、シナリオの改編やキャスティングなどを巡り、その筋の人が介在するケースは後を絶たない」(某プロダクション関係者)ことは事実なのだ。

 筆者は反社会的勢力を擁護するつもりはない。また、彼らと長年に渡ってもたれ合いを続けてきたさまざまな業界をフォローする意図もない。ただ、現実問題として反社会的勢力を徹底排除すると、さまざまな業界で問題が噴出するという一旦を読者に知ってほしいと考えただけだ。

 角界の浄化作戦は、どの程度まで日本の暗部をえぐることになるのか。社会全体で注目していく必要があるだろう。

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