どうなる? 財務省がビジネス書を出版したら相場英雄の時事日想(1/3 ページ)

» 2010年07月01日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『株価操縦』(ダイヤモンド社)、『偽装通貨』(東京書籍)、『誤認 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo


 出版不況が長期化する中、筆者が本業とする「小説・漫画」の売れ行きが芳しくない一方で、ビジネス書は常に各種ランキングの上位に位置しているのは多くの読者がご存じのところ。ビジネスパーソンのハウツー、スキルアップ、効率化などさまざまなジャンルの書籍が世に出ているが、その多くは著名コンサルタントや経営者の著作だ。

 ここで筆者から大胆な提案を行ってみたい。とかく批判の的にされやすい財務官僚がビジネス書を創ったらどうなるのか。筆者の個人的な見方ではあるが、これはベストセラー間違いなしの素材なのだ。

記者を味方に取り込むセンス

 筆者は現在、小説・漫画原作の仕事をメインに活動している。作家部門のほかには、経済ジャーナリストの肩書きで当欄や他のWebサイトでニュース解説のコラムを書いている。このほか細々とではあるが、長年の記者経験を生かし、企業向けにマスコミ対策の助言業務も行っている。本稿はこの助言業務で得たネタから始めたいと思う。

 契約の関係上、助言業務の詳細は明かせないが、筆者が某大手コンサルタント会社と提携し、コンサル会社のクライアントに対して記者会見のノウハウや個別インタビュー時の心構えを説くのが主な内容だ。毎回、レクチャーが終わったあと、顧客企業の幹部からは以下のような率直な質問を頂戴する。

 「どうやったら記者と良好な関係を築けるのか」、「担当替え直後の記者にどのように新商品やサービスを説明したら良いのか」などだ。個別具体的な助言をさせていただくケースもあるが、筆者が必ず触れることは「財務省を手本にすると良い」というポイントだ。

 まずは「記者との良好な関係」について解説しよう。

 筆者は日銀や東証の記者クラブ在籍経験が大半で、財務省の記者クラブである財政研究会(通称・財研)に所属したことはない。ただ、金融取引の制度改革、あるいは国際金融市場取材のために、頻繁に財務省(当時は大蔵省)に出向いた。日銀や東証の職員によってはそれぞれの記者クラブの所属でなければ嫌な顔をする輩が少なくなかった。

 しかし、財務省は全く別。制度の詳細や問題点を懇切丁寧に説明してくれるほか、場合によっては担当課長、はたまた局長に即座に面談できるケースも少なくなかった。初めて取材した際は「駆け出し記者に対し、申し訳ないほど時間と人を割いてくれた」との好印象を抱いたことを鮮明に記憶している。

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