よくよく考えるとおかしい……超党派での消費税議論藤田正美の時事日想(2/2 ページ)

» 2010年06月28日 08時22分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]
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 政府支出のほぼ20%を占めるNHS(ナショナル・ヘルス・サービス、国営医療サービス)への支出は削減しないことになっているからだ。そうなると他の部門の削減率は25%と極端に高くなり、それだけ実現が危ぶまれることになる。

 オズボーン財務相は支出のカットによって国が果たす役割が小さくなれば企業の投資が増え、輸出も増えて、雇用も増加すると主張している。しかしそうならない可能性も高いと同誌は指摘する。

 英国の景気はまだまだ自律回復にはほど遠く、需給ギャップが残る以上、企業は投資に慎重にならざるをえない。そうなれば銀行は融資を渋る。政府支出を抑え、付加価値税を上げれば国内の市場にいい影響はない。それに英国の貿易相手として最大のユーロ圏の国々の景気も回復基調に入ったとは言い切れない。エコノミスト誌は期待どおりに経済が動かないことに備えてオズボーン財務相は「Bプラン」を用意しておくべきだと主張する。

のんびりした感じが否めない民主党

 政権を取って2カ月足らずのうちにこれだけの野心的な財政再建プランを出してきたところは、さすがにいつでも政権を担えるだけの準備をしている政党だ。それに比べると、日本の民主党は財政再建について語り始めたところは評価できるが、増税は早くとも2012年とか、プライマリーバランスの黒字化は2020年目標とかずいぶんのんびりした感じが否めない。それに「増税しても成長できる」といういわゆる成長戦略の要の議論は、どう考えても理解できない。そもそも国が民間よりも効率的な資金の使い方ができるというのは「幻想」である。それは歴史の証明するところだ。

 いずれにせよ、参院選の結果によって日本の政治はまた大きく動きだすだろうが、単なる数あわせの離合集散だけは勘弁してほしいものだと思う。日本の経済にも財政にも、劣化した政治を許容する時間はもはや残されていないからである。

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