しかし、その意識を支えているブータンの風土の根底にあるのは、チベット仏教への「信仰」である。その国を参考に、日本は、ポスト資本主義の社会を生きようというのである。
元ソニー上席常務の天外伺朗氏は著作『GNHへーポスト資本主義の生き方とニッポンー』の中で、「宗教色を一切排除した中で、国民の大多数が深い精神性に目覚めていくことが起きない限り、なかなかGNHが向上するものではない。これは、今の日本に課せられた、とてつもない難問だ」と指摘している。
宗教の機能は大きく2つあると言われる。「受容と安定機能」と「自立と創造機能」である。今を受け入れて心穏やかに、自分を見つめて明日を力強く歩む。目に見えない「幸せ感」を国家の指標にしたいというなら、「信仰」や「宗教」に頼らない、「受容と安定機能」と「自立と創造機能」をもたらす教育の道を示すべきだと思う。「政教分離」という原則を守りながらもポスト資本主義を歩む覚悟があると言うなら、もっと豊かな国会運営があるのではないだろうか。今の日本のままで、GNHを国作りの指標にするなんて議論は、ちゃんちゃらおかしい。
2010年現在の日本のブータンは北陸3県である。その風土は議会制民主主義の政治が主導で創ったものでも、資本主義の波に飲まれて経済が優先でつちかわれたものでもない。きっと、顔見知りの人たちが、農作業を共同でやることで知恵を出し合い助け合う、綿々とつながる小さな組織間の信頼が積み重なった結果が、その風土を作り上げたのだと考える。ポスト資本主義の日本の生き方は、遠いブータンより、近くの北陸3県に学ぶべきである。
ちなみに、都道府県他殺率のデータに相似しているものがある。2009年度の「衆議院比例代表:公明党得票率」である。
他殺率が高い都道府県ほど、公明党得票率が高いのが面白い。得票率全国1位は沖縄県。他殺率で上位にあった大阪府や福岡県も、ベスト10に入っている。そして反対に、47位は富山県であるなど、北陸3県は、予想通り下位を占めている。(中村修治)
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