いきなり“けつまずく”菅首相、トップになって何をしたいのか藤田正美の時事日想(1/2 ページ)

» 2010年06月21日 13時23分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 ある政治家にとって一国のリーダーになるのが夢であるのならば、その政治家にとって必要なのは一国のリーダーになる覚悟である。

 その意味で言うと、このところ、その覚悟にお目にかかったことがない。小泉首相は良くも悪くも覚悟があったと思う。「郵政民営化」という首相の持論をどうしても実現するという意思は固かった。

 実際、2005年に参議院で郵政民営化法案が否決されたとき、「死んでも民営化をする」として、衆議院を解散し、総選挙に突き進んだ。国民がそれに圧倒的な支持を与えたのは、ある意味で当然のことである。小泉内閣が誕生した2001年、バブルが弾けて10年以上たっているのに、日本経済の先行きは不透明なまま。閉塞感ばかりが過剰な中で、小泉首相のようにマスコミを上手に利用して、メッセージを発信できるリーダーが登場すれば、国民は期待する。

 小泉首相のマスコミ操作術ばかりに目を向けるのは正しくない。郵政民営化と自民党をぶっ壊すとした首相の覚悟にも目を向ける必要がある。

 鳩山首相の失敗はどこに原因があったのか。まずは首相自身の「思い」が抽象的であったこと。米軍基地移設問題で具体的に言った「最低でも県外」という言葉は、何の成算もなく言われたことが後で判明する。外交においては「対等な日米関係」という言葉もあった。しかしそれが何を意味するのか、具体的な外交の舞台で何を切り札に米国と渡り合うというのか、さっぱり分からなかった。「トラスト・ミー」と言って、国内をまとめきれない様子は、米国から見ればこっけいであったかもしれない(もっとも米国は鳩山政権の素人ぶりを笑ってばかりもいられなかったはずだ。アジア安定の要である沖縄を米軍が自由に使えるかどうかは死活的に重要だからである)。

腰砕けの説明をした菅首相

 さて鳩山首相が退陣して菅首相が登場した。前首相と違って、市民運動出身で地に足のついた政治家ともされ、また歯に衣を着せぬ物言いも、時には脱線があるとしても一定の人気があったと思う。安倍さんや福田さん、麻生さん、鳩山さんと首相を輩出した華麗なる一族というわけでもなく、その意味でも国民の支持率がV字回復したのは理解できる。

 しかし、そういった目で新首相を見るとき、おやっと思うところがある。まずは、就任直後の国会運営である。新しい国のリーダーになったのに、所信表明や代表質問こそやったものの会期を延長することなく、選挙戦になだれ込んでしまった。参院民主党が選挙を焦ったからだったようだが、支持率が高いうちに選挙をしようという意図が見え見えになってしまった。国民目線から言えば、理解の得にくい行動である。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.