コラム
» 2010年06月17日 08時00分 UPDATE

相場英雄の時事日想:マスコミは“白旗”をあげるべし! 官房機密費問題の副作用 (1/2)

元官房長官・野中広務氏の発言に端を発した官房機密費問題。大手マスコミや政治評論家に、秘かにカネが流れていたことが注目されているが、同時にメディア界全体への不信感が強まっていることが問題だ

[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『株価操縦』(ダイヤモンド社)、『偽装通貨』(東京書籍)、『誤認 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo


 元官房長官・野中広務氏の発言に端を発した“官房機密費問題”。大手マスコミや有名政治評論家向けに、長年秘かに金が流れていたことが大問題となっている。フリーの著名ジャーナリストたちを中心に、大手新聞、テレビへの批判が強まっているのは周知の通り。

 一方、厳しい批判にさらされているメディア側からは、正式な形での反論は聞かれない。後ろめたいことがあるため、反論、あるいは検証すらできないというのが実態だと筆者はみる。ただ、批判の集中砲火を浴びている各社の政治部のために、メディア界全体への不信感が強まるのは危険だ。この際、各社の政治部は一斉に白旗をあげてはどうだろうか。

心証はクロ

 一連の問題に触れる前に、2009年8月に当欄で記した筆者のコラムをご参照いただきたい(関連記事)。通信社の経済部で金融機関や一般企業を取材してきた筆者は、各社の広報マンから業務上の付き合いとして接待を受けてきた。民間の広報費を用いた宴席に出たあとは、その都度自腹で宴席を設け、かろうじてバランスを取ってきた。元記者として昨今の機密費問題を最上段で論じる資格はない。筆者のこうした履歴を許容していただけるなら、お付き合いいただきたい。

 2009年8月の原稿でも触れたが、筆者が接した「ごく一部の政治部ベテラン記者たち(他社を含む)」の中には、有力政治家からもらった高額な宝飾品を誇示したり、はたまた住宅購入に当たり、派閥領袖(りょうしゅう)から頭金の支援を仰いでいたことを嬉々として明かしてくれた人物さえ存在した。こうした人は1人や2人ではなかった。

 他の同僚、また他社の記者からも同様の話を多数聞いたことがある。政治部の中でも、特に自民党の大派閥担当、あるいは政局取材に強みを持つ記者ほどこの傾向が顕著だったと鮮明に記憶している。要するに、担当した政治家やその秘書、あるいは派閥との結びつきがどれだけ強いかが、記者に対する暗黙の評価対象になっていたからだ。

 現在問題となっている官房機密費に関して、筆者は野中氏が指摘した「官房長官の引き継ぎ簿」を実際に目にしたわけではない。誰がいくら、いつ受領したかなど詳細に関しても知り得る立場にない。

 ただ先に触れたように筆者が接した「ごく一部の政治部ベテラン記者たち」の事象に当てはめれば、一連の官房機密費問題に対して抱く心証は「さもありなん」であり、「クロ」なのだ。

 大手マスコミの経営体質をかんがみると、こうしたごく一部の政治部記者の何割かは着実に社内の出世コースを登り、経営陣の一角、あるいはトップに就いているケースさえあるはずだ。記者クラブの開放問題とも併せ、一連の官房機密費問題を鋭く批判されても、大手マスコミが反論できないのは、ある意味当たり前だと筆者はみる。

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