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» 2010年06月11日 08時00分 UPDATE

視覚の隙を突いて、空間をねじ曲げる。アニッシュ・カプーア (1/2)

インド、ムンバイ生まれの現代彫刻家、アニッシュ・カプーアの個展が6月19日まで、東京・谷中のSCAI THE BATHHOUSEで開催中だ。

[上條桂子,エキサイトイズム]
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※この記事は、エキサイトイズムより転載しています。


 インド生まれ、イギリス在住の現代彫刻家アニッシュ・カプーア。個展が6月19日まで、東京・谷中のギャラリーSCAI THE BATHHOUSEで開催中だ。

 アニッシュ・カプーアは、1954年、インドのムンバイ生まれ。1970年代にイギリスに留学し、現在はロンドンに在住している。1980年代からイギリスを中心に彫刻作品やパブリックアート作品を多く発表し、1990年のヴェニス・ビエンナーレの英国館の代表になり世界中から注目を集め、イギリスを代表するアーティストとなり現在も活動を続けている。

 カプーアは、ステンレスや石、アクリル、ファイバーグラスなどさまざまな素材を用いて彫刻作品を作るが、造形的には抽象的で非常にシンプルな形が多い。しかし、それがひとたび空間に置かれると、光の反射や吸収、写り込みなどの効果で、空間の概念そのものが揺るがされてしまう。

 金沢21世紀美術館の展示室にぼっこりと開いた大きな穴の作品「世界の起源」や、2002年にロンドンのテートモダンで行った巨大な朝顔のようなインスタレーション「Marsyas」といった、大規模な美術館でのコミッションワークで、彼の作品を見たことがある人も多いのではないだろうか。今回の展示では、新作を含めてカプーアが扱う多彩な素材による作品が堪能できる。

エキサイトイズム 「1000 Names」1979-80、Wood and chalk powder、76×76×38センチ

 上は1979-80年の作品「1000 Names」。非常に粒子が細かい顔料(Chalk Powder)が山のようになっており、そこにぽっこりと穴が開いている。これは、彼の作品アーカイブを見ると、アーティスト活動を始めた初期の頃、80年代に多く作られている作品で、白のほか、原色の赤、シアン、イエロー、黒などの顔料も使用されている。

 この作品を見て、日本の「香道」を思い出した。香道では、灰手前といって、聞香をする際に小さな灰の山を作り、そこに炭団をくべて香を聞くのだが、精神統一をして心を空にしていないとなかなか美しい灰の山は作れない。

 ところ変わって、インドでは顔料や砂を用いて曼荼羅(まんだら)を描く。思いの対象は違えど、1つの非常に繊細な所作を通して、自身の内側へ入っていく、その根底にある気持ちは変わらないのではないだろうか。

 この作品も、非常に繊細な粒子を用いて緊張感のある造形を形作る。どんな思いで作られたのかは想像するしかないが、このシンプルなかたちの中には「祈り」の気持ちがあるように感じられた。

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