横山裕一「ネオ漫画」の世界にどっぷり浸る(1/3 ページ)

» 2010年06月11日 08時00分 公開
[上條桂子,エキサイトイズム]
エキサイトイズム

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「高い美意識と審美眼を持ち、本物を知った30代男性」に向けたライフスタイルのクオリティアップを提案する、インターネットメディアです。アート、デザイン、インテリアといった知的男性の好奇心、美意識に訴えるテーマを中心に情報発信しています。2002年11月スタート。

※この記事は、エキサイトイズムより転載しています。


 「普通の漫画じゃない!」。いわゆる書店の漫画コーナーにあるような普通の漫画ではなく、コンテンポラリーアートや建築、カルチャー好きな人たちの間で爆発的な人気を誇る横山裕一氏。

 現在、川崎市民ミュージアムで開催されている個展「私は時間を描いている」では、漫画作品はもちろん、漫画以前に描いていたという油彩画、そして、オリジナリティあふれる横山氏の漫画ワールドを形成する幼少期のスケッチなど、横山裕一のほぼすべての作品が網羅されている。

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 会場全体の構成を見渡すと、会場全体を囲むようにぐるりと円を描くようにテーブルが連なっており、そこには「ニュー土木」「アウトドア」「トラベル」「NIWA」の漫画作品の原画が展示されている。そして、中央のテーブルには、今回の新作となる漫画「ベビーブーム」のボツ原稿を使った、非常にカラフルで繊細なコラージュ作品の台と全漫画の全コマ、約3000コマをスキャンしたという映像が上映されている。そして、会場を取り囲む壁面には、油彩画等の過去の作品が展示されている。

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 横山裕一氏が漫画を描き始めたのは「時間」を描くことができるから。今回の展示タイトルにもあるが、この展覧会はその連続性が堪能できるような構成になっている。

 「1枚の絵だとその前後の時間が描けないじゃないですか、なのでその続きを描きたいというところから漫画が始まりました。15年くらい前からカラーの漫画みたいなものを描きはじめました。あっという間でしたね。今後も僕は漫画をやるべきだと思う。展覧会をやってくれるのは非常にうれしいことです。僕の最大の目的は本を売ること、普及させること、社会教育ですよ、啓蒙活動。それには美術館が一番いいんですよ。人が来て買ってくれるから」(横山裕一氏)

 今回の会場構成は、トラフ建築設計事務所。トラフの鈴野浩一氏はかねてより横山裕一漫画の大ファンで、サンフランシスコの文化施設「NEW PEOPLE」の設計を手がけた際も、インテリア全体に横山さんが描く顔をフィーチャーしている。横山漫画を知り尽くした鈴野氏は、今回の展覧会のオファーを快諾、随所に横山氏の世界観をちりばめるとともに、漫画を読むために最適な会場構成を施した。

 「会場全体に人工芝を敷いたのは、横山さんの「ニュー土木」や「NIWA」などの作品がアウトドアなイメージからです。横山さんも人工芝大好きと聞いていたので。今回の会場構成のポイントというのは「時間の流れを見せる」ということでした。美術館では、壁で作品を見せるのが一般的ですが、それだと高尚な作品っぽく見えてしまう。それでテーブルで見せることを考えていて、いろいろな方法を試しているうちに、すべてのテーブルを繋げて美術館の外周に添うようなかたちでぐるっとめぐるのがいいと思いつきました。外側を1周回ると「トラベル」の漫画の内容にも重なります。テーブルは外側と内側からそれぞれ漫画が読めるようになっており、漫画は左から右に読んでいくので、内側にいる人は外側の人と反対周りになってぐるぐる会場をめぐることになる。そういう人がすれ違っていく姿自体をデザインしました」(トラフ鈴野浩一氏)

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