日本が誇る? ライカコピー「Minolta-35」-コデラ的-Slow-Life-

» 2010年06月09日 08時00分 公開
[小寺信良,Business Media 誠]

 これだけいろんなカメラを扱ってきても、まだ手にしたことがない日本のメーカーがまだ相当ある。カメラブーム全盛期におけるメーカー層の厚さは、いまからは想像も付かない。ミノルタもそんなメーカーの1つであった。

 ミノルタの名前は、いまもコニカミノルタの名前で残っているものの、カメラ事業からは2006年に完全撤退し、その資産はソニーに受け継がれた。αマウントのレンズと設計ノウハウは、ソニーの中で生き続けている。

 以前、コニカのカメラ「Konica II B」を手に入れたので、いずれはミノルタもと思っていたのだが、ひょんなことからジャンクとして売られていた古いカメラボディを入手した。Minolta-35は、Lマウントのレンズが使えるライカコピーである。

百戦錬磨の風格漂うMinolta-35

 シリーズには、I型、E型、F型、II型(前期)、II型(後期)、IIB型の6モデルがあるようだが、正面にMODEL IIの刻印があることから、おそらくII型だと思われる。前期か後期かはレンズの違いしかないようだが、レンズが付いていないので分からない。いずれにしても1953年から1957年ぐらいまでに作られた、古いカメラである。

 軍艦部のC.K.S.の刻印は、千代田光学精工株式会社の略称だ。当時ミノルタは社名ではなく、カメラのブランド名であった。会社名をミノルタに変更したのは1962年のことである。

メーカー名はまだミノルタではない

 軍艦部の流れるような曲線を見ると、同年代の「Konica II B」を思い出す。当時はまったくの別会社だが、曲線の美しさと工作技術の確かさは、高度な熟練の技を感じさせる。

動作は完璧だが……

 入手したMinolta-35 MODEL IIは、ご覧のように革が劣化してはがれている。幸いにして凹みはないが、長年使い込まれた傷が結構ある。その代わり、動作は完璧のようだ。外装の革のひび割れから、ジャンク扱いになっていたものと思われる。

 ファインダーはかなり綺麗で、内部も掃除する必要はなさそうだ。フォーカスは二重像を合わせるタイプだが、コントラストが高く二重像が見やすい。また、視度調整まで付いているのは、さすがに芸が細かい。

ファインダーに視度調節がある

 中を開けると、布製横走りのシャッター幕が見える。最高速は1/500秒までしかないが、低速は前部のダイヤルで1秒まで設定できる。シャッターボタンは頭にネジが切られていないのでレリーズが付けられないが、バルブモードもちゃんとある。フィルムカウンターは加算式で、巻き上げノブを回すたびに1コマ進む方式。シャッターのロック機構は持っていないようだ。

布製横走りのシャッター幕

 セルフタイマーは、3段階の数字が付いているが、その場所で何かクリックがあるわけではなく、まあ、レバーの倒れ具合で適当に撮影までの時間を制御するだけの話である。タイマーのスタートはシャッターボタンではなく、レバーの後ろにあるポッチを横にずらして行う。レバーもボタンもかなり堅いので、三脚なしでその辺に適当に置いて撮影するのは、さぞやしんどかったことだろう。

 実は、Lマウントのレンズは以前購入したFEDの50ミリがあったので、これを付ければいいやと思っていたのだが、いざ付けてみるとフォーカスレバーの位置がセルフタイマーのレバーに干渉して全然使えない。それどころか、よく見てみると、二重像による距離合わせを制御するレバーのでっぱり具合が全然ちがうので、距離表示もまったく合わないのであった。

フォーカスレバーが干渉してこれ以上回らない

 マウントさえ合えばメーカーが違っても付くものと勝手に思いこんでいたが、さすがに古い規格だけあっていろいろと細かな仕様の違いがあるようだ。レンズはまた後日、物色しに行くことにしよう。

小寺 信良

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映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作はITmedia +D LifeStyleでのコラムをまとめた「メディア進化社会」(洋泉社 amazonで購入)。


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