徹底した事前リサーチが鍵――デアゴスティーニの「パートワーク」ビジネス出版&新聞ビジネスの明日を考える(1/2 ページ)

» 2010年06月08日 19時52分 公開
[吉岡綾乃,Business Media 誠]

 雑誌の休刊や出版社の倒産など、不景気な話題が多い出版業界(関連記事)。しかしそんな中でも、売り上げが変わらず、むしろ伸びているという雑誌出版社がある。

 デアゴスティーニ・ジャパン(以下デアゴスティーニ)は、1つのテーマについての情報を週刊や隔週刊形式で発行する、「パートワーク」(分冊百科)と呼ばれるスタイルの雑誌を発行する出版社だ。

 出版不況・雑誌不振が叫ばれる中、デアゴスティーニの雑誌はなぜ売れるのか? ここでは『戦国武将 データファイル』など、同社の歴史物を中心に手がける、嶋田典子さんに話を聞いた。

パートワークで世界シェア50%以上

デアゴスティーニ・ジャパン マーケティング部 アシスタントマーケティングマネージャー/プロダクトマネージャーの嶋田典子さん

 デアゴスティーニグループはイタリア・ノヴァーラに総本社を持ち、世界33カ国に進出している外資系の出版社である。1901年、世界地図の普及を目的として設立された地理学研究所から発展しており、特にパートワーク出版においては世界の半分以上のシェアを占める。

 デアゴスティーニが出版する雑誌のテーマは、歴史や地理、音楽、料理などさまざまだ。同社の独特な販売方法について、テレビCMなどで見たことがある人も多いだろう。例えば嶋田さんが手がける最新作『戦国武将データファイル』は、全ページカラーの週刊誌だ。通常定価は1冊580円。5月25日発売の創刊号は290円と通常定価の半額で、専用の特製バインダーが付録に付いてくる。全100号の発行を予定しており、毎号バインダーに保存していくと、百科事典のような戦国武将のデータ集ができるという仕組みになっている。

 紙の雑誌だけでなく、プラモデルのパーツが毎号付いているもの(全号買いそろえると、大きな作品が完成する)や音楽CDが付いているものなどもある。例えば『安土城をつくる』の通常価格は1490円だが、創刊号は590円で、安土城についての雑誌と天守六階の屋根のパーツ、そして組み立てDVDが付いてくる。110冊全て買いそろえると、織田信長が築いた安土城の模型が90分の1スケールで完成するという内容だ。

週刊『安土城をつくる』。毎週付いてくるパーツをすべて集めて組み上げると、90分の1スケールの安土城(木製模型)が完成する
       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.