ソーラー発電にした方が、“お得”なのか松田雅央の時事日想(2/3 ページ)

» 2010年06月08日 08時00分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]

出力1キロワット≒3000ユーロ

 ちなみに、ソーラー発電設備の値段はいかほどなのだろう。モジュールを含めた資材購入費、設置工事の人件費などすべての費用を概算すると「出力1キロワット≒約3000ユーロ」になる。今回の設備は合計出力30キロワットだから、出資者のAさんにとっては3000×30=9万ユーロの買い物だ。Aさんはこれに加え事前の屋根補修費用、枠組み足場の設置・利用費、各種保険料、管理・補修費も負担しなければならない。電力買い取り価格保証制度のおかげで、重大な故障さえなければ約15年で出資した資金を回収できるはずだ。

 試しに電力収入を計算してみよう。この地域の日照エネルギーだと、出力1キロワットのモジュールで年間900キロワット時の電力を生産できる。計30キロワットのモジュールならば計2万7000キロワット時だ。現在の売電保証価格は0.39ユーロ/キロワット時なので、年間売電収入は約1万500ユーロになる。モジュールの購入費と設置工事費だけならば9年未満で出資費用を回収できるが、前述のように付随する工事の費用や経費が上乗せとなるため、現実的には10〜15年程度となる。

 もちろん、これはすべて自己資金で工事した場合の話。自己所有の土地とソーラー発電に適した建物があり自己資金で工事できるならば、いまどきこれほど確実な投資はない。しかし、銀行からの借り入れや土地を借りる必要がある場合には、ビジネスとしてのリスクは当然高まる。

 いずれにしても、出資費用の回収期間を正確に見積もることができ、その期間が15年程度に収まる点が電力買い取り制度の力であり、それを整備するのが政治の役割というもの。モジュールの生産だけでなく、販売・運輸・設置工事・保守サービスまで含めれば20万〜30万人の労働需要を持つソーラー産業は不景気な時代にあってきわめて有望な産業である。

ソーラー職人養成カリキュラムを持つ職業学校(フライブルク市)のソーラー実験棟

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