ほかにも3つほどあるが、ここでは省略する。1〜3を詳しく見ていきたい。
1の「章立て」であるが、これを著者に書かせるのは酷である。そもそも本を書くことができないから、ゴーストライターを使うのである。にも関わらず、主要出版社の一部の編集者は「とりあえず、ご自身が書きたいものを並べてください」などと言い、「章立て」らしきものを書かせている。
しばらく後で、私のところにそれが送られてくる。それを見ると、やはり本の構造を理解していない。こういうルートで70人前後の著者のものを見たが、合格点に達していたのは2人だけだった。
本来、ビジネス書は1〜5章ほど(いくつでも構わない)のパートに分かれる。その上で、それぞれの章の中に節(せつ)がいくつもある。大体、1つの章につき、少なくて5つ、多いときは10前後の節が並ぶ。この章と節の組み立てが大切なのである。
ほとんどの著者が書いた「章立て」らしきものには、同じ意味合いの章が2〜3つ並んでいた。さらにテーマとはかけ離れた章も入る。節になると、破たんしている。数は少なくとも、40は欲しい。だが、そこまで達するのは15人に1人くらい。多くの人は20前後の節を書き出すのが、精一杯である。たとえ数が多くとも、同じ意味合いのものであったり、その章のテーマとは無関係のものが多い。そこで、ライターの出番なのである。
このようなとき、私の経験でいえば著者の過去の本やブログなどに目を通す。取材を受けた経験があるならば、そのときの記事なども読む。これらの作業により、節を40〜50前後まで書き加える。その上で章立てを組み立て直す。そして、また節の入れ換えをする。これをくり返すこと、5〜6回。このくらいまでしないと、たたき台にはなりえない。ここで私がよく思うことは、「ここまでやると、もはや著者のコンテンツとは言い難い」ということ。
ひどい場合は、ほかの著者や論文などから節を見つけ出し、あたかもその著者のものとして書き加えることすらある。時おり、他の著書の“パクリ”として問題になる理由の1つはこのあたりにある、と私は十数年前から確信している。
本来、このたたき台をもとに、著者が「これをこうしよう」とチェックできれば問題にはならない。ところが、著者の3人に1人は何も言わない。いや、言えない。大体、口にするセリフは「(ライターが書いた)原稿を見てみないと、分からない」。ほかの著者も何かを言うのだが、本の構造を分かっていないから、こちらが分かるようには説明できない。これが、ビジネス書の裏側の一断面である。
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