どこまで拡大するのか iPadの経済効果神尾寿の時事日想・特別編(4/5 ページ)

» 2010年06月02日 15時08分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

 これによりドコモはiPhoneに続いてAppleの新製品を獲得し損ねたことになるが、その損失はiPhoneの時より今回のiPadの方が大きい。なぜなら、ドコモの従来型ケータイからiPhoneへの“機種変更”は、契約数は変わらずにiモードやiコンシェルなどドコモ独自のサービス利用料が目減りしてしまうが、iPadの3G契約はケータイから乗り換えるものではないため、“純粋な新規契約の2台目需要”になるからだ。ドコモにとって「従来型のiモードケータイとiPad」の組み合わせは理想的なのである。しかし、日本市場向けのiPadがソフトバンクモバイルのSIMロック付きで販売されたことで、それは画餅(がべい)になってしまったのである。

 その悔しさからではなかろうが、ドコモは一転して2010年の夏商戦ラインアップで、モバイルWi-Fiルーターに注力してきた。これは手のひらサイズのバッテリー内蔵型無線LAN基地局で、3Gサービスの通信をWi-Fiの電波に変換して、周囲のWi-Fi端末から利用できるようにするというもの。これがあれば、iPadはもちろん、ニンテンドーDSやPSPなどさまざまなWi-Fi内蔵のモバイル端末が、Wi-Fi経由でドコモの3Gサービスで通信できるようになる。

 SIMロックによってドコモはiPad向け3Gサービスを提供できなくなってしまったが、モバイルWi-Fiルーターを使えばiPadの通信需要も取り込める、というわけだ。ドコモはこのモバイルWi-Fiルーターの拡販に本腰を入れており、2010年6月1日から2010年9月30日までの期間限定であるが、2年間の利用と新規加入を条件に、利用開始から1年間の利用料金の上限を4410円/月にするキャンペーンを実施する※。

※ISP利用料は別。2年目からは契約時の通常料金。

 iPad発売に合わせて、Wi-Fiモデルの通信需要をモバイルWi-Fiルーターで取り込もうとするのはドコモだけではない。この分野の草分けであるイー・モバイルは5月25日、同社のモバイルWi-Fiルーター「Pocket WiFi」をはじめとするデータ通信端末の利用料を12カ月間1000円割り引くキャンペーンを発表。iPadの発売日には、都内の家電量販店に並ぶiPad購入者にPocket WiFiを売り込むなど、iPad特需の獲得に積極的だ。ほかにも、MVNO事業者の日本通信がモバイルWi-Fiルーター「b-mobileWiFi(BM-MF30)」を投入するなど、iPad発売を受けてモバイルWi-Fiルーター市場が一気に活性化してきている。

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