どこまで拡大するのか iPadの経済効果神尾寿の時事日想・特別編(2/5 ページ)

» 2010年06月02日 15時08分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

 iPadは従来のPCと、ケータイやスマートフォンの“隙間を埋める”新しいジャンルのコンピュータだ。PCよりカジュアルに、しかしスマートフォンよりはしっかりと、インターネットやデジタルコンテンツを使うというコンセプトで作られている。そのため四六時中PCを使い、モバイルノートPCやネットブックをいつも持ち歩くような人には物足りない部分はあるだろう。しかし、外出先やリビングルームで、ちょっと調べ物をする、メールの返信を書く、Twitterでつぶやく、ブログのコメントを返す、といった用途ならば、むしろPCよりもiPadの方が使いやすい場面が多い。PCやスマートフォンを代替するのではなく、それらとは違う利用スタイルを作るのが狙いなのだ。

iPadを購入するために行列ができた

iPad市場への参入相次ぐ

 インターネットやデジタルコンテンツの利用をもっと簡単にして、新たなライフスタイルを創造する。それはすなわち、新たな市場を作ることにもつながる。しかもiPadは、世界的なヒット商品になっている。米国のみでの販売でも発売からわずか28日で100万台を突破。5月28日には日本・オーストラリア・カナダ・フランス・ドイツ・イタリア・スイス・スペイン・英国で発売され、そのわずか3日後に全世界の販売台数が200万台を突破した。

 このiPad販売の好調を追い風に、iPad向けのコンテンツやサービスへの市場参入が相次いでいる。

 例えば、iPadの注目分野の1つである電子書籍では、講談社が京極夏彦氏の新刊を発売したことを筆頭に、PHP研究所やスターツ出版、千趣会や産経新聞などが次々にコンテンツを提供。また5月31日には、ソフトバンクが雑誌・TVなど31メディアのコンテンツがiPad/iPhoneで読める新サービス「ビューン」を発表した(関連記事)。国内では、Appleの提供する電子書籍配信ストア「iBookstore」は提供されないが、iPad向け電子書籍市場には次々と参入が起こっている状況だ。

 ゲームなどエンターテインメントコンテンツも、iPad市場参入の動きが速い分野だ。アプリ販売ストアである「App Store」では多くのiPad専用ゲームが公開されており、その中にはカプコンやハドソン、バンダイナムコゲームスなど複数の国内ゲームメーカーも名を連ねている。ハードウェアの性能が高いiPadは携帯ゲーム機よりも家庭用の据え置き型ゲーム機に近い表現が可能で、それでいて持ち運ぶこともできる。従来からある「携帯ゲーム機と据え置き型ゲーム機の“すきま”に新しい市場を作る可能性がある。そこが注目」(ゲームメーカー幹部)なのだ。

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