インタビュー:アジア初の個展、フリードリッヒ・クナス(1/4 ページ)

» 2010年05月28日 08時00分 公開
[上條桂子,エキサイトイズム]
エキサイトイズム

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※この記事は、エキサイトイズムより転載しています。


 東京・元麻布にあるカイカイキキギャラリーで、ロサンゼルスで活躍中の現代アーティストのフリードリッヒ・クナス氏の個展「I used to be darker, but then I got lighter, and then I got dark again」(過去には暗く、光は差したが、再び今は闇の中)が開催中だ。

エキサイトイズム フリードリッヒ・クナス氏

 タイトルにもあるとおり、彼の作品の中にはさまざまな感情が揺れ動いている。初日にはクナス氏も来日し、ギャラリー内で作品解説を行った。スーツ姿で現れたダンディなクナス氏。手には数本のスプレーを持って、絵にプシュプシュと何かを振りかけていた。

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 ここで絵の手直し? と思い近寄ってみたら、持っていたのは香水瓶。甘い香りがギャラリー中に漂っている。まずは、その匂いの理由をクナス氏に尋ねてみた。

 「見えない立体を作っているんです。匂いっていうのは、見えないスカルプチャー。それは記憶の彫刻のようなものです。作品ひとつひとつにすべてアイデンティティがあるから、それによって匂いを変えている。いまは、自分の香水を作っているからその実験でもある」

 そして、アジア初となる展覧会の経緯を尋ねると、

 「ムラカミから最初に個展の話を聞いたのは、マイアミのアートバーゼルでだった。僕の作品を見てくれていて会いたいとコンタクトがあってね。最初は不思議な気分だったんだ。特に理由はないんだけど、ムラカミと僕の作品はなんか対極にあるような気がしていた。だって彼は完璧主義だろ? でも話してみたら同じ言葉を持つ人間だって分かったんだ。それで個展が決まった」

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 展覧会は2つの空間に分けられる。ギャラリー内の畳が敷いてある空間と、ホワイトキューブの空間。クナス氏はここにまったく異なる2つの世界をつくり出した。

 「自分たちが生きている毎日の生活には、常に2つの感情が同居している。それはhappyとsadとか、nature(自然)とart(人工)とか、光と闇、喜びと哀、西と東、白と黒……。考えてみたら対極にあるような物事が常に葛藤している。この2つの感情は非常に遠いところにあるように見えて、実は紙一重だったりもする。今回は、展覧会自体にもそういった対立する感情を同居させようと思った。右側の空間は、多くが腹の底から感情を揺り動かされた体験、つまり興奮が高まった夢見るような心持ちを基にして生まれた作品。左側の空間には、どちらかというと西欧的で理知的なコンセプチャル作品を展示した」

 ギャラリー自体がクナス氏の脳の中のような構成になっているらしい。では、右脳サイドから見ていくことにしよう。彼の感情を司る空間である。

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