米国市場が軟調、為替も円高となり売り先行で始まったのですが、持高調整の売り一巡感もあり大幅高となりました。朝方は売り気配から始まるものが見られ、日経平均も一昨日の安値を下回るような展開でしたが寄付きの売りが一巡した後は底堅さが見られ、底堅さが確認されると後場からは堅調な地合いとなりました。為替が円高一服となったこともありますが、業績面から割安感も出ていたことで、売り一巡感が出ると買戻しを急ぐ動きも出ているようです。
昨日の相場で少し潮目が変わったかもしれないという話をしましたが、インターネット証券で発表している信用取引の評価損益率を見ても買い方の評価損が大きく広がったのは「当たり前」といえば当たり前なのですが売り残高の評価損益率がプラスになりました。この数字がプラスになるというのは昨年の11月、「ドバイショック」の時以来という話も出ており、それだけ「異常な状態」ということだったので、反発となったものと思います。
昨日までと何がどう変わったかといわれても相変わらず米国の経済指標が好調だとか、欧州では引き続き金融規制強化の流れから信用収縮懸念が根強いとか、中国がユーロ圏の保有国債を見直しているという話があったのですが、どれも買戻しを急ぐようなことでもありません。ただ、OECD(経済協力開発機構)が新興国を中心に経済の拡大、景気回復が続いているとして、日米欧の成長率を上方修正したということが金融不安が景気を悪化させるのではないかとの懸念を払拭するようなことになったのでしょう。
金融不安や信用収縮の動きが世界経済の足を引っ張り、景気を悪化させるのか、景気の回復、世界経済の拡大が金融不安を払拭するのかというところで、経済拡大が続いているとの見方が強まったということなのでしょう。商社株のPER(株価収益率)が10倍を割り込んだり、日経平均ベースの予想PERも20倍を大きく割り込んだり、騰落レシオも60%台になったり、移動平均の乖離などから見た割安銘柄が多くなったりと、売り難く、買い場を探すようなところで、持高調整の売りが見えないことが、買い要因となったものと思います。「呆れ果てたる値が出れば、それが高下の境なりけり」という「三猿金銭秘録」の一節が思い出されます。
慶應義塾大学法学部卒。1983年に大和證券に入社、以来、マネックス証券などを経て現在リテラ・クレア証券で相場情報などに携わっている。営業やディーラーの経験を基に、より実戦に近い形でのテクニカル分析、市場分析に精通している。日本証券アナリスト協会検定会員、日本テクニカル協会会員。著書に『江戸の賢人に学ぶ相場の「極意」 』 (パンローリング)、『儲かる株価チャート集中セミナー』(ナツメ社)。清水洋介の「株式投資の羅針盤」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング