コラム
» 2010年05月27日 08時00分 UPDATE

郷好文の“うふふ”マーケティング:「当社はお客さまに会いません……」と言う会社の社長に会ってみた (1/3)

Webサイトの売上アップ支援を行うEC studio。同社ではインターネットの特徴を生かした、「顧客と会わない」経営を強みにしているという。そこで、筆者も同社の山本敏行社長にプレステ3を通して、インタビューしてみることにした。

[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の開発、海外駐在を経て、1999年〜2008年までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略など多数のプロジェクトに参画。2009年9月、株式会社ことばを設立。12月、異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。コンサルタント・エッセイストの仕事に加えて、クリエイター支援・創作品販売の「utte(うって)」事業、ギャラリー&スペース「アートマルシェ神田」の運営に携わる。著書に『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など、印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」を連載中。中小企業診断士。ブログ「cotoba」。Twitterアカウントは@Yoshifumi_Go


 会社はクラウドで幸せになる。

 そう思ったのは“クラウドインタビュー”の体験から。三軒茶屋(東京都世田谷区)と吹田市(大阪府)をPS3(プレイステーション3)で結んだ電子会議システム。実に滑らかでコマ落ちもない。モニターに向かっての対話、ライター未踏(?)のプレステ・インタビューが始まった。

 「PS3の導入のきっかけは?」

 EC studioの三軒茶屋オフィスから私が尋ねる。吹田オフィスにいる同社社長の山本敏行さんが答える。

 「あるコンサルティング会社に仕事をお願いしたら、交通費も請求されたことがあったのです。最初はお会いしてじっくり話す必要がありますが、後はメールでもいいじゃないかと思ったんですよ。すると社員が『PS3のビデオチャット機能が使える』と言うんです」

ah_pures1.jpgah_pures2.jpg 三軒茶屋と吹田市をPS3で結んだ電子会議システムを利用したインタビュー

 実はインタビューが始まる前、本当にPS3なのかウラ側を見た(笑)。確かに液晶ディスプレイのウラにはPS3があった。マシンに搭載するCPUは、米国エネルギー省が核兵器の模擬実験に使うものと同スペックだという。ビデオチャット機能+スカイプで、拠点当たり100万円かかる“本格的”な電子会議システムをわずか3万円(PS3の価格)で実現。東京と大阪だと、新幹線往復1回分の価格だ。

 だが、PS3会議は、同社の“クラウド経営”のほんの一例に過ぎない。

EC studio 山本敏行社長インタビュー

※システムの都合上、上に大きく表示されているのが筆者で、下に控えめに表示されているのが山本社長になっている。

お客さまと“リアルに会わない”

 インタビューがクラウドなら、経営もクラウド。EC studioには「顧客に会わない」というポリシーがある。同社の事業の柱は、累計5万社の顧客を抱える“Webサイトの売上アップ支援”「Web Analyst」。そのサービスを提供するに当たって、一切顧客とリアルで会わない。

 「なぜお客さまと会わないんですか?」、と聞いてみた。

 「打ち合わせに当たっての電車代などは顧客が負担します。しかし、それは結局回りまわってみんなの負担になるからです」

 Web Analystではアクセス解析ツールとWebサイト診断アドバイスがセットで、キーワードやコピー、広告、マーケティングなど30ページにおよぶ多面的な分析・改善提案レポートを提供。それでいて、1カ月わずか1万500円。競合他社の数分の1の料金になるのは「会わない」からだ。

 「お客さまが困っていること、分からないことは電子メールでフォローします。“先読みサポート”が当社のウリです。電話に甘えてはいけません」と山本社長は笑う。

 会わないとはいえ、無機質な感じはみじんもない。むしろ、ヒューマンタッチ。社員採用はスキルは二の次で人柄重視。単なるコンピュータオタクではダメで、対人コミュニケーション能力をチェック。お客さまの“気持ちを察する”ことを大切にしているという。

 オフィスも徹底している。三軒茶屋オフィスは路地裏の住宅で、猫がニャーと廊下から現れそう。吹田の本社も最寄り駅から徒歩20分、窓もでっかくて明るい。女子社員の要望で“床暖房”まで付けた。在宅勤務でもオフィス業務でもOKだから、才能ある主婦も外国人も働いている。三軒茶屋も吹田も居心地が良くて家賃が安い。その結果、経営コストが安くなる。これらはお客さまが来社しないからこそ実現できること。

 考えてみれば、“リアルに会わない”のはインターネットの特徴。EC studioはそれを存分に生かしているのだ。

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