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» 2010年05月26日 08時00分 UPDATE

それゆけ! カナモリさん:アサヒビールの挑戦――若者は“氷点下”のビールに振り向くのか? (1/2)

凍る寸前のビール……聞いただけでノドが鳴る。若年層の「ビール離れ」を食い止めようとするアサヒビールの「新しい飲み方の提案」は成功するのか。

[金森努,GLOBIS.JP]
GLOBIS.JP

それゆけ! カナモリさんとは?

グロービスで受講生に愛のムチをふるうマーケティング講師、金森努氏が森羅万象を切るコラム。街歩きや膨大な数の雑誌、書籍などから発掘したニュースを、経営理論と豊富な引き出しでひも解き、人情と感性で味付けする。そんな“金森ワールド”をご堪能下さい。

※本記事は、GLOBIS.JPにおいて、2009年5月24日に掲載されたものです。金森氏の最新の記事はGLOBIS.JPで読むことができます。


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 氷点下の温度帯(マイナス2度〜0度)の「アサヒスーパードライ」を飲めるバーが銀座にオープンした。それは「ビール離れ」といわれる若者向けの取り組みだという。

 「氷点下の『スーパードライ』を体感できる!『アサヒスーパードライ エクストラコールドBAR』」(アサヒビールのニュースリリース

 「氷点下」という温度に行き着いたのも、同社が若者対策を模索しての結果である。

 通常、スーパードライの飲用推奨温度は4度〜8度程度。しかし、「0度で『アサヒスーパードライ』をお飲みいただいた場合、特に20代の若い層を中心に、ブランドの特徴である「味のキレ」「シャープさ」「のどごし」などを強くお感じになる方が多くいらっしゃることが明らかになりました」(アサヒビール調べ)とのことである。

 これからの暑い季節、キンキンに冷えたスーパードライがノドを駆け抜けていく感触を想像しただけで、思わずノドがゴクリと鳴ってしまいそうだ。いや、本来の筆者なら想像している暇があるなら、5月21日のオープン日に駆けつけていたはずだ。禁酒中の身が恨めしい……。

 未知の領域0度。キンキンに冷えた味わいに興味は湧くが、考えてみれば、「そんなに冷たかったら味わいもないのでは?」と思うが、そこは「若者対策」。オジサンの好みに構ってはいられないのだろう。だが、若者はなぜ0度のスーパードライの味を好むのか。恐らく、それを好むのではない。普通の温度の味が嫌いなのではないか。なぜって、それは「苦いから」。

 飲み会の乾杯準備で「みんな、生でいいよね?」はもはや禁句だ。刺身を食べながら、「カシスグレープ」を飲んでいるからといって、「それって……」と言うなど言語道断。若者と飲みに行く際の最低限のマナーである。それほどまでに若者はビールを飲まない。もう10年もすれば、ビール派の方がマイノリティーになっているかもしれないという勢いだ。

 そここそが、アサヒビールの危機感なのだ。正直なところ、「味わってくれなくていい! のどごしさえ楽しんでくれて、それがクセになるなら!」という思いなのだろう。0度でクセになり、家飲みで通常の4度〜8度を飲んでも気にならなくなる。そんな成長過程を期待しているのかもしれない。

 懐かしの横山光輝の漫画『伊賀の影丸』に、「村雨兄弟」というキャラクターがいる。毒の使い手となるために、幼少の頃から毒を少しずつ飲まされて育ち、毒に対する耐性を身につけているのだ。

 さて、初めてビールを飲んだときのことを覚えているだろうか。「その時、何歳でしたか?」とは聞かない。「お酒は20歳から」だから当然だ。そして、その時の感触を覚えているだろうか。「うっぇ〜苦っが〜い!!」と、結構、衝撃的ではなかっただろうか。

 それがしばらくすると、あら不思議。平気で飲めるようになって、オイシイと思うようになる。それを仕込むのは親だったり、先輩だったり、上司だったりとさまざまであるが、ともかく村雨兄弟のごとく、少しずつ耐性を付けて立派な毒使いならぬ、ビール飲みになるのが人の成長でもある。

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