オーストリアに学ぶこと……それは林業のチカラ松田雅央の時事日想(3/3 ページ)

» 2010年05月25日 08時38分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]
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省力化が時代の流れ

 1本の木を切り倒して丸太にする際、枝や樹木の先端部など邪魔な部分を切り落とすわけだが、これが全体重量のおよそ50%に相当する。作業システムや林道の整備状況の違いから、日本ではこういった部分が山に残されることが多く、これがいわゆる林地残材だ。日本でも木質バイオマスの需要が喚起され林地残材に経済価値が付くとなれば、おのずとその量も減少するはずだ。

 オーストリアと日本の林業システムで特に異なるのは、切り出した木の集材方法だ。オーストリアの森は傾斜地が多いため材木搬出用トラックまで木を集めるのに、架線集材という方法をとることが多い。100メートルから数百メートルのワイヤーを空中に張り、そのワイヤーに集材機をぶら下げて木を集めてしまう。

 オーストリアも人件費が高いため、傾向として林業も省力化と自動化が進んでいる。この点、状況は日本の林業と共通性がある。

架線集材機による作業(左)、オーストリアは製紙産業も盛ん。奥に見えるのは製紙原料となる木材チップの山(右)

地産地消型の資源

 木質バイオマスは地産地消型のエネルギー源である。そもそも木材チップや木材ペレットはかさばるから長距離輸送には向かないし、輸送燃料が多量に必要であれば「何のための再生可能エネルギーか?」ということになる。

 もう1つの特徴は、中小林業農家や(こう書いては語弊があるが)林業しかない土地にもビジネスチャンスが生まれるということ。日本では産業としての林業が長らく放置されてきたが、荒れた森・荒れた山をどうにかしなければならないという政治的機運の中で、その重要性が再認識されるようになってきた。林業を魅力ある産業に育てようと思う時、日本にとってオーストリアの状況はおおいに参考となるはずだ。

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