この国の問題は「誰がおカネを使うのか」ということ藤田正美の時事日想(2/2 ページ)

» 2010年05月24日 07時49分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]
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 この論理自体は説得力がある。しかし問題は、誰がその医療費を払うのかということだ。多くの人は高額の保険料を払っている上に、窓口ではさらに3割負担をしている。医療費をこれ以上払ってもいいという人はそうたくさんはいないだろう。これ以上の医療費は税金で負担するかということになるが、例えば10兆円医療費を増やすとなったら、それだけで消費税で4%分の引き上げが必要だ。

 しかしこれからの日本は、消費税を上げてもそのカネはこれまでの借金減らしに使われることになり、医療費に注ぎ込む余裕はない。何と言っても今年度末にはGDP(国内総生産)の2倍近い借金になることが目に見えている。これまでのところ日本政府に「カネを貸している」のはほとんど日本国民であるとしても、貯金を取り崩すようになれば、日本政府は外国の投資家に国債を売らなければならなくなる。そうなった暁には、日本の「ソブリンリスク」(国にお金を貸しても、返済されないのではないかというリスク)は急激に膨らんでくる。

 そこまでにらんで、民主党が成長戦略を打ち出すことができるかどうか。もしここで根本的に従来の考え方を変えて、大胆な成長戦略を描くことができなければ、当面の景気見通しはともかく、日本の将来は相当に危うくなってしまう。固唾(かたず)を飲む思いで鳩山政権を見守っているのは、私だけではあるまい。

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