多少の汚れはあるものの、動作には問題がなさそうなYASHICA EE。同社初のEE(自動露出)機ということで、仕組みが気になるところだ。さっそく軍艦部を開けてみることにした。
構造は、非常に簡単である。両サイドにあるネジを外し、フィルムの巻き上げレバー、巻き取りレバーを外せば、簡単に軍艦部が開く。実に素直な設計である。
まずはファインダーだが、ハーフミラーを挟んで接眼側は金属のフタ、対物側はなぜか紙製のフタがしてある。多くのカメラは、紙なら紙と割り切るか、金属なら金属で統一されているものだが、2つの素材を使い分ける必要があったのだろうか。紙を使う理由は吸湿性に優れているからだと思われるが、なぜ片方にしか使われていないのだろうか。
二重像が薄いのは、ハーフミラーの劣化によるようなので、あまり改善の余地はない。多少ホコリを払ったぐらいに留めた。古いハーフミラーは、蒸着が脆くなっているので、クリーナーなどで拭くと剥がれてしまうことがある。ブロアーで吹き飛ばすか、乾いた綿棒で汚れをぬぐうぐらいに留めておいた方がいい。
二重像の位置調整は、背面のネジでできるようになっていた。軍艦部カバー背面に大きなネジがあるが、これは軍艦部カバーとボディを留めているものではなく、調整用ネジのフタであった。これを外せば、軍艦部を開けることなく、距離の調整ができるようになっている。当時は、時々調整するものだったのだろうか。
幸いこのカメラにはバルブモードがあるので、調整は比較的容易である。
続いて露出計表示を観察してみる。これは正面の細長い採光部から光を取り込み、それをこれまた細長い鏡で反射させて露出計の影を映す、という仕組みであった。赤いアクリル板が左右に配置してあり、シャッタースピードに合わせて幅が狭くなったり広くなったりする。
さらにシャッタースピードリングと連動して、円筒形の露出計が回転し、針の位置をオフセットするようになっている。残念なことに絞りリングには露出計がまったく連動しないため、フルマニュアルでの撮影では別に露出計が必要になる。もう一工夫だったのだろうが、コストとのバランスでそこまではできなかったのだろう。
このカメラは、フィルム巻き上げレバーを回すと、その途中でガシャンとロックが外れるような音がする。こっちのほうがシャッター音のように豪快で、実際のシャッター音は「チッ」という蚊の鳴くような音で拍子抜けする。
その動きを確認してみたところ、フィルムが巻き上がっていない状態では、露出計もロックされて反応しない。巻き上げる途中でこのロックが外れ、シャッターがチャージされるという仕掛けだった。
露出計連動型のEEでは、多くの場合針自体をギザギザの歯でギロチンのように挟み込み、その挟まれた位置で絞りの開閉が決まる。YASHICA EEも同様の構造だが、シャッターボタンの押下の力を使って別のギザギザを挟み込み、その高さの位置によって絞りを決めているようだ。
いずれにしても針の挟み込み位置によって絞り値を決めていることには変わりないが、こちらのほうが針への負担が少ない。針ハサミ方式は1950年代から存在したが、長期間の安定動作をめざして、改良したということだろう。
絞りの羽根は五角形で、これはYASHICA Electro35まで同じである。絞りの形は奇数角形がよいのだとする説もあるが、その理屈はうまく飲み込めない。単純に、菱形以上の角にするために、最小限の羽根枚数でできる五角形に落ち着いたのではないかという気がするのだが。
映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作はITmedia +D LifeStyleでのコラムをまとめた「メディア進化社会」(洋泉社 amazonで購入)。
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