世界最大級の建設機械メッセ「BAUMA2010」に行ってきた松田雅央の時事日想(2/4 ページ)

» 2010年05月18日 08時00分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]

隙間市場で独自の技術力を発揮

 まず、筆者が注目した特色ある2社について写真を交えて紹介しよう。

 最初に取り上げるのは特殊なコンクリート型枠を手掛けるHuber&Sohn社(フーバー&ゾーン)。元々同社は木造建築を生業としていたのだが、木材に精通する知識と経験を生かして特殊コンクリート型枠事業に進出した。会社はミュンヘン郊外にあり、従業員約200人でコンクリート型枠のほか、木造住宅、木造橋梁、木材コンテナ事業も行なっている。

 工事の種類としては、複雑な形で交差する下水道、特殊な形状の屋根、トンネルの入り口部分など、単純には組めないコンクリート型枠作りと施工作業が挙げられる。中でもBMWミュンヘン工場の風洞実験施設は、その規模と構造の複雑さから同社にとっても難しい工事だった。

 コンクリート型枠事業部長フリューサー氏によれば、同社の強みは設計・施工・解体まで一貫して請け負うシステムにある。高い技術と豊富な経験を持ち、一貫した作業を行なう同業他社は欧州内でもごくわずかしかないという。

 使っている素材にはプラスチック板もあるが、ほとんどは木材に表面加工を施したもの。形状によって異なるが、型枠は2回から数十回まで再利用可能で、型枠として利用できなくなれば木材燃料として最終利用できる。ミュンヘンのあるバイエルン地方は木材生産と木造建築が盛んな土地柄だ。

 同社は、古来から生活に馴染みの深い木材資源、伝統技術、そして最新技術をうまく組み合わせ、隙間市場で独自の存在感を獲得することに成功している。

BMWミュンヘン工場の風洞実験施設建設現場(左)、コンクリート型枠事業部長フリューサー氏(右)

30年余りで急成長

 もう1社、トンネル掘削用のシールドマシンで世界展開するHERRENKNECHT社(ヘレンクネヒト)を取り上げる。

 広報部長のクーン氏に1977年創業の同社が30年余りで世界企業に成長できた秘密をうかがったところ「当社は直径0.1mから19mまで、ほぼあらゆる径のシールドマシーンと掘削マシーンを製造しています。どんな現場でも、どんな直径でも、どんなトンネルでもがモットーです。積極的な技術開発、高い管理能力、柔軟性が成功の要因でしょうか」

 「聞いた話ですが、日本でも大きなシェアを持っているそうですね」と水を向けると「残念ながらその情報は間違いです。日本での販売実績はなく、まだ当社の実力を示す機会に恵まれていません。日本企業が日本国外で行なう工事に当社の製品が採用されることもあるのですが、日本国内になると……」。日本市場参入はまだハードルが高いようだ。

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