弱みは克服するな! ドラッカーが教える「人と組織の成長戦略」(1/2 ページ)

» 2010年05月18日 08時00分 公開
[松本真治,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:松本真治(まつもと・しんじ)

有限会社ワースプランニング代表取締役、人材・組織開発コンサルタント。


『さあ、才能に目覚めよう』

 先日、ある大手書籍売り場に行った時、ビジネスの平積みのコーナーを見て驚いた。新刊本に交じって、かなり前に発刊された本が平積みされているのである。ドラッカーの本と『さあ、才能に目覚めよう』である。

 ドラッカーは、関連本の『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』の売れ行きの影響もあるが、『さあ、才能に目覚めよう』は2001年に発売された本である。「あなたの5つの強みを見出し、活かす」との副題が示す通り、強み発見の指南書として知る人ぞ知る名著である。200万人超を調査にしたところ、「人の強みは34に収れんされる」ということで、そのうち、誰しもが持っている5つの強みを発見し、伸ばしていくことが才能を発揮するために重要だというのが本書の主張である。

 強みを生かすことの重要性や必要性が、日本においても注目されつつあるということは、大きな進歩であり、潜在的な今後の成長を秘めている。しかし、実際に変化が起きているかというと、まだまだである。

 世界的にみても現実は厳しい。世界規模の調査会社であるギャラップが以前、1700万人以上の企業組織で働く従業員に「最も得意な仕事をする機会に毎日恵まれているか」という調査を行ったところ、「YES」と回答したのはわずか20%であった。要するに、現実にはわずか20%しか、自分の強みを発揮できていると感じていないのである。

 日本では学校教育を見ても分かるように、強みを生かすことよりも、弱みを克服することに重点が置かれてきた。この影響もあってか、日本の多くの企業の従業員も、才能や強みを伸ばすよりも、どちらかというと弱点を克服するように指導されてきている。「最も成長の余地があるのは、その人の一番弱い部分である」という誤った認識もある。このような状況下では、「自分の強みを発揮できている」と感じていない人の割合はもっと高いのではないだろうか。

 日本の多くの企業では、高いパフォーマンスを生み出すハイパフォーマー人材モデルを全員共通の目標とし、その人材モデルと比べて、劣る部分である弱みを克服することに力を注いできた。市場が成長途上の背景下では個々人の画一的な成長の総和が企業を発展に導いてきた。

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