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» 2010年05月18日 08時00分 UPDATE

それゆけ! カナモリさん:「節約疲れ」な消費者の財布をどうしたらつかめるのか? (1/2)

「節約疲れ」。そんなキーワードが各メディアで目につくようになってきた。節約志向が高まっていた消費者が、ついに我慢に疲れて今年に入ってから消費を始めたという説。終わりのない価格競争から抜け出すチャンスかもしれない。

[金森努,GLOBIS.JP]
GLOBIS.JP

それゆけ! カナモリさんとは?

グロービスで受講生に愛のムチをふるうマーケティング講師、金森努氏が森羅万象を切るコラム。街歩きや膨大な数の雑誌、書籍などから発掘したニュースを、経営理論と豊富な引き出しでひも解き、人情と感性で味付けする。そんな“金森ワールド”をご堪能下さい。

※本記事は、GLOBIS.JPにおいて、2009年5月14日に掲載されたものです。金森氏の最新の記事はGLOBIS.JPで読むことができます。


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 4月16日付毎日新聞朝刊に、思わず目をひかれる社説が掲載されていた。「牛丼と弁当 値下げの余波が心配だ」。さすが生活者の視点を大切にする毎日。牛丼戦争が社説で取り上げられているのだ。

 社説は、牛丼戦争に象徴される値下げ競争の悪影響を危惧し、「値下げだけではなく、消費者が財布のひもをゆるめるような、サービスや品質での競争にも力を注いでもらいたい」と結んでいる。論説委員のお歴々、心配はいらない。「節約疲れ」は英語では「pent-up demand(抑圧需要)」というようだが、その需要を取り込もうと各社が工夫をこらして動き始めた。

 「節約疲れの女性に「ちょい高め」パン コンビニ各社」(4月4日asahi.com)

 従来より数十円から100円高いパンやデザートの販売に力を入れ始めた。「少し高くても、おいしいものを食べたい」という若い女性がターゲットだという。また、中堅コンビニ、スリーエフの中居勝利社長は、「消費者の低価格志向を先取りして小売り各社は値下げしてきたが、今年度上期でその競争も止まるだろう」との予想で、高価格帯の充実を検討中と記事中でコメントしている。

 ポイントは、「従来より数十円から100円高い」というところだろう。抑圧された需要の向かう先は「ぜいたく」ではないのだ。ほんのちょっと。プラスアルファの消費。そこに商機があるのだろう。だとすると、そこは各社のプライシングの腕の見せ所だ。

 消費者が「どれくらいまでなら払ってもいい」と考える価格を元にプライシングする「カスタマーバリュー(需要)志向価格設定」のなかでも「知覚価値価格設定」というものがある。市場調査などによって、消費者が受け入れやすい「売れる価格」を探り出すのである。

 この時、2つ重要なことがある。製品がきっちりと差別化されていること。さらには顧客に「適切な価格である」と認識させることだ。

 米国ブランドの「コーチ」が、1990年代半ばに日本市場での巻き返しを行った例が有名だ。「手の届く高級品」というコンセプトに従って製品仕様を改訂。従来の価格帯から 30〜40%ダウンさせて、消費者を取り込んだのである。

 「節約疲れ」「pent-up demand」を取り込むには、コーチの例とは逆に、今度は少し高めの価格設定で、商品の質をちょっとアップさせるのがポイントだ。その例として、モスバーガーの展開を見てみよう。

 「“ひとときの贅沢”需要にお応えして「ぜいたくモスバーガー」「ぜいたくモスチーズバーガー」580円と640円で期間限定発売!!」(同社ニュースリリース)

 同社はリリースでも、「まだまだ厳しい日本の経済環境ですが、一方で“節約疲れ”ともいわれるようになり、我慢し続けるだけでなく本当にいいものは購買したい、というニーズも高まりつつあります」と「pent-up demand」の取り込みを明言している。外食産業でもいきなり高級レストランに需要が向かうことはない。「ちょっとしたぜいたく」というレベルでは一部でもブーム化している高級バーガー程度がちょうどいいところだ。

 そして、ご注文いただいてから手作りするモスならではの、「ハンバーガー1つでちょっとしたぜいたく気分が味わえる『ぜいたくモスバーガー』をお届けします」としている。これは、自社のバリュープロポジション(Value Proposition=競合に真似できない自社ならではの提供価値)を生かした非常にうまい手だといえる。

 マクドナルドも内装を豪華にした新型店舗で100円メニューを廃止して、メニューも最大50円アップするなどの客単価アップに向けてかじを切っているが、チャレンジャーのモスバーガーは、ハンバーガー類の定番商品を軸として商品ボリュームごとに、「ボリュームゾーン(上位価格帯)」、「レギュラーゾーン(中位価格帯)」、「ライトゾーン(下位価格帯)」の3つの価格帯で幅広く商品群を設けるという戦略をとっており、「既存の最高価格品と比べても80円〜140円高い」とより大胆な展開をしている。

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