情報通信技術で「Green of」と「Green by」に貢献――「富士通フォーラム2010」リポート(1/3 ページ)

» 2010年05月17日 12時06分 公開
[栗田昌宜,Business Media 誠]

 富士通は5月13日と14日の2日間、東京国際フォーラムでプライベートセミナー・展示会「富士通フォーラム2010」を開催した。展示会は、ICT(Information and Communication Technology、情報通信技術)/クラウド、インテリジェント社会、環境、経営/グローバル、ユビキタス・フロントなどジャンル別にコーナー分けされており、興味・関心のある展示デモを短時間に見て回れるよう配慮されていた。ここでは環境関連の展示デモを中心にレポートする。

データセンターからデバイスまでの「Green of ICT」

 富士通のようなICT企業が環境負荷軽減に貢献する方法は、大きく分けて2通りある。1つは「Green of ICT(ICTの省エネ)」、もう1つは「Green by ICT(ICTによる省エネ)」だ。

 Green of ICTはさらに、データセンターなどの施設や設備、システムを構成するハードウエアやソフトウエア、ネットワーク、さらにはICT機器に使用されるデバイスなどの要素に分類することができる。

 データセンターなどの施設や設備として展示デモされていたのは、2009年度の総務省実証実験として取り組んでいる自然エネルギー(寒冷な外気と雪氷)を活用した寒冷地向けハイブリッド型空調システムの模型(参考出展)や、空調シミュレーションや温度/風速センサーの設置、空調機器の個別制御などによってデータセンターの電力使用効率を向上する省エネ運転マネジメントシステム、アイル(サーバラックで仕切られた通路)単位で効率的に冷却する局所空調システム、ラックまでの配電を200ボルトに統一し、機器の直前で100ボルト化することによって電力ロスを削減するラックマウント型ダウントランスなど。

総務省実証実験の事例として展示されていた寒冷地向けハイブリッド型空調システムの模型(北海道グリーンエナジーデータセンター)。冬期に貯蔵した雪氷(右)や寒冷な外気をデータセンター(中央)の空調に利用して電力使用量を削減する。データセンターの後方には太陽光発電システム、左側には排熱を利用した野菜工場なども配置されている

 省エネ運転マネジメントシステムなどのデータセンターのグリーン化技術は、同社のクラウドサービスの新拠点「館林システムセンター」にも活用されているという。

省エネ運転マネジメントシステムの画面。画面の中ほどに並んでいる二重円は温度/風速センサーが検出した必要風量と供給風量で、円が一致する(供給比率が100%となる)ように個々の空調機器を自動的に最適制御する

 ICT機器の消費電力を削減する技術/製品として展示されていたのは、水冷ユニットや省エネ静音ファン、待機電力ゼロPCなど。水冷ユニットと省エネ静音ファンはノートPCからサーバまで幅広く適用できる技術で、両者を組み合わせることにより、冷却ファンで50%、装置全体で10%の消費電力をそれぞれ削減できるほか、約30%少ない回転数で従来と同等の冷却性能を実現できるため、静音化にも寄与するという。

水冷ユニットと省エネ静音ファンを組み込んだブレードサーバ

 待機電力ゼロPCは、OSのシャットダウン/休止時の待機電力をゼロにできるPC。通常のPCはシャットダウン/休止時でも電源スイッチのオン/オフやウェイクオンLANなどの信号を検知するために作動している(電力を消費している)が、待機電力ゼロPCは電源部で電力をカットするため、待機時の消費電力をゼロにすることができる。同様に、電源部にあるサービスコンセントの電力もカットするため、サービスコンセントから電力供給を受けているディスプレイや周辺機器などの待機電力をゼロにすることも可能。待機電力ゼロ時でも、あらかじめ指定した時間であればネットワークを介した運用が可能なので、管理者によるリモート管理にも支障を及ぼさない。

 富士通の試算によると、待機電力ゼロPCは従来のPCに比べて年間消費電力を13%削減できるという。ちなみにこれは、待機電力1.7ワットのPCと比べた場合の値で、待機電力を5ワット前後消費する最新のPCと比べると、削減率はさらに大きくなる(サービスコンセントに接続されたディスプレイを加えるとさらに大きくなる)。残念ながら待機電力ゼロPCは日本では販売されていないが、ブース担当者によるとEMEA(欧州・中東・アフリカ)向けに4月に発売して以来、すでに5万4000台を販売したという。

待機電力ゼロPC。左のディスプレイに表示されている消費電力は、最新PCとディスプレイとの比較測定値

 このほかGreen of ICT関連では、企業の運用ポリシーに合わせてPCの電源設定を利用者または管理者が対処・統制できるソフト「Systemwalker Desktop Patrol」や、繰り返し使えるノートPC向け梱包箱なども展示されていた。

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