コラム
» 2010年05月17日 08時00分 UPDATE

ちきりんの“社会派”で行こう!:「国費留学した官僚の退職は許せん!」と憤るあなたへ (1/3)

国費留学した官僚の退職を防ぐために制定された「国家公務員の留学費用の償還に関する法律」。それが功を奏して、施行後の退職者数は減ってきていますが、ちきりんさんは「国費留学生の退職は日本にとって本当に悪いことなのか?」と問いかけます。

[ちきりん,Chikirinの日記]

「ちきりんの“社会派”で行こう!」とは?

はてなダイアリーの片隅でさまざまな話題をちょっと違った視点から扱う匿名ブロガー“ちきりん”さん。政治や経済から、社会、芸能まで鋭い分析眼で読み解く“ちきりんワールド”をご堪能ください。

※本記事は、「Chikirinの日記」において、2005年10月20日に掲載されたエントリーを再構成したコラムです。


 「国家公務員の留学費用の償還に関する法律」をご存じでしょうか。2006年6月に施行された法律で、国家公務員が国費による留学中、もしくは留学直後に退職した場合、留学費用を国に返還させることを義務付けています。

 この法律ができる前の2001年〜2005年の5年間では618人が留学し(人事院の留学制度のみ)、うち45人(7.3%)が退職していたらしいのですが、法律施行後は退職者が激減。総務省の発表でも最近の退職者は年に1〜3人と退職率1%未満に低下しています。

 この法律は、国費で留学した若手官僚が、留学中や留学直後に給料が高い外資系金融機関に転職したり、起業、もしくは米国で働き始めることについて「税金の無駄遣いだ!」という批判が高まっため制定されたのですが、抑止策としてかなりの効果があったと言えるでしょう。

ah_tiki1.jpg 国家公務員の留学費用の償還等に関する状況(この表は人事院以外の留学制度も含んでいます、出典:総務省)

官僚一筋のAさん、転職・起業組のBさん

 ところで、ここで言う「税金が無駄になる」という概念には、なかなか味わい深いものがあります。例えば、次の2つのケースを比べてみましょう。

ケースA

 国費(税金)で留学したエリート官僚のAさん。留学から戻って配属されたのは、学んだことと全く無関係な部門。仕事は相変わらずのお役所仕事。上司もベタベタの浪花節。学んできた新しい方法を提案しても、「米国ではうまくいっているかもしれないが、必ずしも日本に合っている制度ではない」などと言われることが多い。たまに英語で電話がかかってきた時に対応するくらいしか、学んだことは使えない。それでもAさんは、留学させてくれた組織に感謝しつつ最後まで粛々と勤め上げる。

ケースB

 国費(税金)で留学したエリート官僚のBさん。留学から帰ってすぐに、外資系の投資ファンドに転職。年収は3倍になったが、成果が出なければ解雇される可能性もあり、仕事の厳しさも3倍になった。米国の投資家が日本の企業に投資するのを手伝い、買収された企業を経営再建する仕事に従事。15年後、経営再建のプロとしてあちこちの日本の中堅企業の立て直しに従事した。

 (もしくは大成功パターンとして)投資ファンドで5年勤めた後、ネットの可能性に賭けて起業。事業は成功し、10年後に東証マザーズに上場。BさんもIPO(新規株式公開)で資産12億円を達成!

 ……さて、AさんとBさん、どちらが「税金の無駄遣い」でしょう?

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