昇進レースで、早稲田の人間が日大OBに負けた理由吉田典史の時事日想(2/3 ページ)

» 2010年05月14日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

 早稲田OBの副編集長はこの会社の人事の慣例からいって、昇進はもう難しい。数年以内に窓際の部署に追い出されるだろう。そこで「編集局付」という、偉いのか偉くないのか分からない肩書を与えられ、“飼い殺し”になる可能性が高い。そして、定年を迎える。

 ここに、早稲田OBの副編集長が日大出身者をバカにする理由がある。同じ会社にいて、いまや上司である日大OBの編集長(元副編集長)をさすがに批判はできない。となると、その不満のはけ口としては、冒頭で述べたようにまったく無関係の日大出身者がターゲットになる。そして「日大しか……」「日大じゃあ……」と繰り返す。

かくして早稲田OBの副編集長は負けた

 なぜ、早稲田OBの副編集長は負けたのだろう。そのあたりをほかの出版社に移った元部下や、この会社に出入りしているライターやデザイナー、印刷会社の営業マンなど8人にここ半年間でヒアリングをした。それを以下にまとめてみる。

早稲田OBの副編集長が日大OBの副編集長に負けた理由

(1)会社員としての自覚に乏しい

(2)会社や職場のカラクリを心得ていない

(3)管理職のミッションを分かっていない

(4)仕事をしていくうえでの視野が狭く、関係者への配慮に欠ける

 ここまで悪条件が並ぶと、むしろ「よく副編集長になれたな」と私は思う。では、1〜4までを詳しく見ていこう。

 1と2は重なるものがあるが、要は会社員としての自覚、つまり、組織の一員としての意識が希薄なのだ。例えば、副編集長は上司(編集長)への報告・連絡・相談をあまりしない。これでは何をしているのかすら分からないのだから、上の人は評価できない。会社員は「評価に納得がいく」とか「いかない」という以前に、もっと自分を上司に理解させるという工夫をするべきである。

 成果主義が浸透しようと、人事考課全体のうち業績で判断されるのは50〜60%(関連記事)。残りは、協調性や積極性など行動評価である。上司に報告・連絡・相談をしない部下は、この行動評価は間違いなく低い。

 行動評価が低い分を業績評価で挽回できればいいのだが、それほど甘くはない。書籍編集者に求められる業績は、その期間でどれだけ本を出して何冊売ったかということ。読者の中には、「1人でもがんばれば結果が出る」と思うかもしれない。だが、それも甘すぎる。そもそも、上司はこの副編集長を好ましくは思っていないので、あえて「汚れ役」の仕事をさせていた。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.