昇進レースで、早稲田の人間が日大OBに負けた理由吉田典史の時事日想(1/3 ページ)

» 2010年05月14日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

著者プロフィール:吉田典史(よしだ・のりふみ)

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2005年よりフリー。主に、経営、経済分野で取材・執筆・編集を続ける。雑誌では『人事マネジメント』(ビジネスパブリッシング社)や『週刊ダイヤモンド』(ダイヤモンド社)、インターネットではNBオンライン(日経BP社)やダイヤモンドオンライン(ダイヤモンド社)で執筆中。このほか日本マンパワーや専門学校で文章指導の講師を務める。

著書に『非正社員から正社員になる!』(光文社)、『年収1000万円!稼ぐ「ライター」の仕事術』(同文舘出版)、『あの日、「負け組社員」になった…他人事ではない“会社の落とし穴”の避け方・埋め方・逃れ方』(ダイヤモンド社)、『いますぐ「さすが」と言いなさい!』(ビジネス社)など。ブログ「吉田典史の編集部」


 この時事日想で「“偏差値神話”は本当なのか 日大が早稲田をアゴで使うとき」(4月16日)というコラムを書いたところ、その感想や意見をインターネット上で見かけた。私はそれらに目を通し、驚いた。

 おそらく20代の読者と思われるが、 “偏差値神話”に極端なほどの影響を受けていたからだ。会社の昇進レースが、大学受験偏差値ランキングのようになっていると思い込んでいる人もいた。つまり、入学難易度の高い大学の卒業生が無条件で出世すると考えているのだ。

 さらに、この人たちは会社の人事制度や賃金制度のカラクリを怖いくらいに知らない。一方で、20代でもそのあたりを実に冷静に見抜く賢い人がいることも思い知った。

 そこで今回は、ある出版社の昇進競争でなぜ日大OBが早稲田OBを打ち負かしたのかをもう一度、取り上げようと思う。会社の中で上に上がる人には必ず理由があり、その逆も同じくである。そのカラクリの洞察こそ、大切だ。

日大出身者をバカにする理由

 ある日、私が早稲田OBの副編集長に、著名なコンサルタントを著者にして本を作らないかと話した。

 すると、彼はこう答えた。

 「このコンサルは、京都大学の教育を出ているんだな。まあ、こういう人が会社員に向けてキャリア形成をテーマに書くことは意味があるね。だけど日大OBは、キャリアなんて作れないよ(笑)。彼らは会社を転々とすることが、キャリア形成と思い込んでいるから(笑)」

 日大のことはこの前に一切出ていない。ところが、彼は日大の話を脈絡もなく持ち出し、バカにする。その後も「日大しか……」「日大じゃあ……」と口にした。

 この副編集長はいま、“日大コンプレックス”に陥っているといっていいだろう。20年ほど前に早稲田大学を卒業し、出版社に入社した。売り上げや利益では、業界で10位以内に入る名門である。当時は大学生の間でマスコミ業界は人気があり、この出版社の内定を得るための倍率は、少なくとも数百倍だった。彼は期待されて入社したが、さえない編集者のままだった。

 そして今年の人事異動で、2歳年下で日大OBの副編集長が編集長に昇進した。つまり昇進レースで、日大が早稲田を打ち負かしたのである。

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