30代で「オレ様は仕事ができる」と、勘違いしている人へ吉田典史の時事日想(2/3 ページ)

» 2010年05月07日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

上司や先輩から“総スカン”の女性社員

 彼女はいざ仕事をすると、噂どおりだった。勤務時間中、インターネットをぼんやりと見ている。私や課長がその後を通ると、PCの画面を消してしまうので、何をしているか分からない。もちろん報告・連絡・相談はしないし、職場の人とほとんど口をきかない。そして、課長に反論をする。「ちゃんとやっていますから……」「もうやりました……」と。本来、仕事を終えたならそれを上司に伝えて、2人3脚で仕事を進めないといけない。さすがに、これは入社後2〜3年以内にマスターすべきことだろう。

 また困ったことに、課長や私が彼女の仕事の中身を確認すると、ひどいレベルだった。しかし本人はそんなことをお構いなしで、自信満々。自分では「私はデキル!」と思い込んでいるから、手に負えない。1人で「やってきた感」に浸り、近寄れなかったのだ。

“このままではいけない”と気付かせる

 ある意味、ここまで完璧な“デキる人”は珍しいかもしれない。しかし最近は「意外と多いな」と感じている。その後、私は会社を離れ、1人で仕事をしている。取引先の出版社や新聞社、IT系企業などを見ると、この女性に似た人を見かけるからだ。その後輩や先輩に聞くと、こういう人は自分をやたらと大きく見せようとするのだという。後輩の前でホラを吹きまくり、自分のやってきた感の世界に入り込み、そこから出てこないそうだ。

 私には、彼ら(彼女ら)は新しい経験を積んで自分が変わることを拒んでいるように思える。変わることは、失敗をして惨めな思いをしたり悲しくなったりすること。格好よく変わることは、ありえない。スムーズに変わることができるならば、実は何も変わっていないのだ。

 彼らはこういう経験をすることが怖いので、10年という時間にしがみつく。心の中では、新しい経験を積むことで上司から叱られながらも、ボロボロになって前進していく同世代の社員をうらやましいと思っている。そして「このままではいけない」と焦るものの、傷つくのが怖いから虚勢を張る。

 このような私の考えを庄司氏にぶつけると、こう答えた。

 「そこまで焦る人は優秀ですよ。きっかけしだいで将来有望になる人材です。10年で仕事のすべてを覚えたと思うのは勘違いだと、自分を客観視できているのですから。逆に、これですべてと本当に思い込む人は、焦りませんよ。会社からすると、こちらの方が問題です。実際、小さな会社ではその扱いに困っている場合もあります」

 庄司氏は「自分の勘違いに気付くためには、社内や社外との交流で自分を見つめ直すことが大切」と説く。社内では上司などと話し合い、社外では異業種交流会に参加することを挙げた。特に力を込めて語るのが、上司との関わりだ。

 「上司もこういう社員と深く関わるのを避けてきたのではないでしょうか。やはり、扱いに困る人たちですからね(苦笑)。ただ、上司としては本人に“気付き”を与えることは必要でしょう。こういう人に厳しく言うと、自信がないから潰れてしまうかもしれません。なので本人とその先のキャリアも含めて時間をかけて話し合うことが大切です。“このままではいけない”と気付かせてあげることが大事なのです」

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.