ワタシが理解できる人、理解できない人ちきりんの“社会派”で行こう!(2/3 ページ)

» 2010年05月03日 02時00分 公開
[ちきりん,Chikirinの日記]

コミュニケーション成立比率が高ければいいわけではない

 時々、営業員がお客さんに対して、あたかも「私は、お客様とのコミュケーション成立比率がとても高いんですよ!」というように振る舞っているのを目にします。一種の営業テクニックですね。合コンでもよく見ます。端から見る限り、「全然コミュニケーションが成り立っていないよね」と思えるのですが、本人は必死で「すごく理解し合えている感じ」を醸成しようとしています。こういうことが起こるのは、“分かりあえることは望ましいこと”ととらえられているからですよね。

 では、この比率が高ければ高いほどいいのかというと、実はそうでもないのです。ちきりんも大学生のころ、この比率がとても高い人と出会いましたが、その人と話すといつも居心地の悪い思いがしました。

 長年連れ添った夫婦や血を分けた親子ならともかく、初対面に近い人が自分のちょっとした発言にも“その意味”を正確に読み取ってしまうのは、心の内まで見透かされている気分になるものです。結局彼とは何回か朝方まで飲みながら話をした後、疎遠になってしまいました。

 友人にしても恋愛相手にしても、必ずしもコミュニケーション成立比率は最初から高い方がいいわけではないのです。分からないものを分かろうとするプロセス、コミュニケーションの成立比率を高めていくプロセスこそ、人間関係を作るという一番楽しい部分だから、そこを飛ばして分かり合えるとむしろ “気持ち悪い”となるのでしょう。

世の中には話の通じない人も一定比率でいる

 ところで、否応なく関係を持たなければならない人なのに、この比率がずいぶん低い場合はどうすればよいのでしょうか。

 世間には、洋服やアクセサリーを共有し、2人で頻繁に旅行する仲良しの母娘も存在します。そういう場合、2人の間のコミュニケーション成立比率は極めて高く、おそらく“お父さんへの思い”のような微妙な感情まで、母娘で共有できているのでしょう。

 反対に、関係が近くても共有できていない、例えば親なのに、子どもなのにまったく理解できないというのはとてもつらいですよね。

 また、上司とのコミュニケーションが成り立ちにくいケースもとても不幸だし、それが理由で転職する人もいるのではないでしょうか。ちきりんも何回か、コミュニケーション成立比率20%未満な上司と働いたことがありますが、とてもつらかったし苦労しました。ずいぶんひどい評価をされて「クビになるかも」と思ったこともあります。

 そういった経験を通して学んだのは、「世の中にはコミュニケーション成立比率が低く、普通に話していても分かり合えない人がいる」ということです。「人間同士、話せば分かりあえる」と思うからつらいのであって、「話の通じない人も一定比率でいる」と思えば気が楽になります。考えようによっては「今日は3割も話が通じてるなあ!」と喜べるかもしれません。

 時には開き直って、「すみません。私にはあなたの言っていることが、全然分からないのです」と言ってみてもいいし、「あなたも、私の言ってることが分かりにくいんですよね?」と聞いてみてもいいかもしれません。「理解しにくい相手」の存在を認めた上で、そこからお互いに工夫すればいいのです。コミュニケーション成立比率が低い人と理解し合う第一歩は、「お互い理解しにくいですよね」と認識することなのです。

 親子の場合もまったく同じで、「親子だから話さなくても分かってもらえるはず」と思うから、理解し合えないことに余計にフラストレーションがたまります。でも、親子であっても「自分とこの人はコミュニケーション成立比率が低いのだ」と認識すれば、何らかの工夫ができそうに思いませんか?

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