火山噴火も「想定の範囲内」――リスクマネジメントの本質とは(1/2 ページ)

» 2010年04月30日 08時00分 公開
[中ノ森清訓,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:中ノ森清訓(なかのもり・きよのり)

株式会社戦略調達社長。コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供している。


 アイスランドの火山噴火に伴う欧州の飛行制限で、サプライ(供給)リスクのマネジメントに問題があったケースが明らかにされています。

 例えば、半導体向け感光性樹脂やPCの欧州向け輸出や、放射性医薬品原料、生花、緊急手配中のセンサー部品などの欧州からの輸入が滞り、半導体では現地での生産に影響が出かねない状況が懸念され、日産自動車は追浜工場と九州工場の計3ラインでの操業停止、以降の対応が未定であることを明らかにしました(出所:日本経済新聞Web刊2010年4月19日、2010年4月21日9面)。

 「今回のような大規模な自然災害は想定外で、仕方のないこと」

 果たして、そうでしょうか?

 確かに火山噴火による火山灰の影響で、これだけ大規模に空港が閉鎖されるということをピンポイントで想定することは難しいかもしれません。ただ、ストライキやラインの事故、工場火災などで、調達品が届かないということはよくあります。

 通常は安全在庫や代替物流手段により、供給停止リスクに備えるものですが、今回のケースのような保存がきかず空輸せざるを得ないものでは、そうした手段が取れません。それでも、まったく手がないかというと、代替ソースや製造拠点の分散などによる、複数の市場へのアクセスルートの確保といった方法が考えられます。日比谷花壇は欧州からのバラが届かなかったため、国産やケニア産に切り替えて対応しています。

 こうして見ると、サプライヤにとっては今回の件は自然災害かもしれませんが、それに伴う供給停止で影響を受けた買い手企業の問題は、自然災害によるものか、サプライリスクのマネジメントができていないという自社の責任によるものか、判断が分かれるところです。競合他社がこの事態に対応できていれば、顧客から見れば、今回の件は「それは貴社の責任でしょう」ということになります。

 こうした時には、顧客からは納期遅れのペナルティを課せられるものの、サプライヤに対しては通常の売買契約では自然災害を起因とする損害は免責となる条項が設けられていることが多いため、損害を転嫁できず、すべてを被らなければいけないという最悪の事態に陥ることにもなりかねません。

 しかし、ほかに代替の調達ルートがないことをあらかじめ理解していれば、サプライヤのやむを得ない供給停止については、自社の責としないことを顧客と握っておくなどして、最悪の事態を回避することができます。

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