普天間問題をどのように処理するのか? 素人のような鳩山政権は藤田正美の時事日想(1/2 ページ)

» 2010年04月26日 07時52分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 混迷を極めているように見える普天間基地移設問題。鳩山政権は「素人」と見なしている米国は、とにかく議論できる提案をしてくれなければ普天間を継続使用するという姿勢を崩していない。

 もっともオバマ政権にしても日米関係を決定的に悪くするつもりはない。中国との関係を考えても、ここで日米関係が冷却化するのは得策ではない(日本と米国との関係が悪化することは、中国にとっても望ましくないと中国首脳部は表明している)。乱暴な言い方だが、誰も望んでいないのに、日本だけが自縄自縛に陥っているような感じがする。

中国海軍との「接近遭遇」

 そこに降って湧いた中国海軍との「接近遭遇」。中国海軍艦隊が公海上で訓練していたのを監視していた自衛艦に、中国のヘリコプターが90メートルまで接近したというのである。日本は外交ルートで抗議したが、中国側は取り合わない。

 中国人民解放軍の海軍増強は、大きな意味を持っている。もともと中国は大陸国家だが、近年、資源の輸入(石油、鉄鉱石などの鉱物資源)が増えて、経済における海洋ルートの重要性が増している。人民解放軍海軍幹部は、「海外における中国の権益を守る」ために外洋艦隊を建造することを明言した。具体的には空母を建造して、それを中心とする戦闘群を構成し、シーレーンを防衛するというのである。

 日本でもかつてシーレーン防衛ということが話題になったことがある。しかし、それだけの艦隊を整備することはできない相談だった。もちろん予算の制限もあるが、日本が外洋で戦闘できるだけの戦力ということになると、憲法に触れる可能性もある上、米国がそれを認めないということもある。

 分かりやすく言ってしまえば、自衛隊が空母を保有する可能性は、今の日米同盟下では100%ない。日本の自衛隊は、日本周辺を守るのに足りる戦力だけあればよく、それ以外の地域(例えば日本のシーレーン)は米国が守るというのが基本的な考え方である。もちろんこれは日本のためにということだけではない、その地域の軍事的安定ということが米国にとって重要であるからだ。

 その米国に挑戦することができたのは、かつての旧ソ連だけだった。旧ソ連が崩壊してからというもの、太平洋やインド洋は米国の天下だった。そこに挑戦しようとしているのが中国人民解放軍海軍である。

 中国の資源輸入は、中東やアフリカだ。ということは、中国にとって死活的に重要なシーレーンは太平洋とインド洋ということになる。だからこそ、中国はソマリア沖の海賊対策にも出動しているし、そこでの中国艦船の同行を西側諸国の海軍が注目している。そして中国のインド洋進出に対抗して、インド海軍は原潜を進水させ、かつ空母をロシアから購入する。「自分の庭で好き勝手させるわけにはいかない」と、これもインド海軍首脳が語った言葉である。

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