2帖の部屋に住むしかない……無料低額宿泊所の実態貧困ビジネスの現実(1/3 ページ)

» 2010年04月23日 08時10分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

 無料低額宿泊所という施設をご存じだろうか。ホームレスなど住むところがない人たちに、無料または低額で部屋と食事を提供する施設だ。しかし入居者の生活保護費から利用料を天引きしたり、施設職員による暴力などが社会問題にもなっている。なかなか見えにくい“壁の中の問題”について、NPO法人「ほっとポット」の藤田孝典代表理事が実態を語った。

 →貧困ビジネスとは何か? 低所得者を喰う者たち(前編)

 →貧困ビジネスとは何か? 低所得者を喰う者たち(後編)

※本記事は日弁連シンポジウム「貧困ビジネス被害を考える〜被害現場からの連続報告」(4月12日開催)で、藤田氏が語ったことをまとめたものです。

無料低額宿泊所が増える要因

藤田孝典代表理事

 無料低額宿泊所に対する相談は年々、増えている。相談内容としては「通帳を勝手に管理されている」「施設管理者からの暴言・暴力がある」「部屋が狭くて息苦しい」といったものが目立っている。施設を利用しているのはホームレスの人や退院後で住むところがない人が多い。

 埼玉県のとある無料低額宿泊所を外から見ると、ごく普通のビルにしか見えない。しかし窓をよく見てみると、間仕切りがあるのが分かる。つまり部屋を3つに区切って、そこで生活をしているのだ。6帖の部屋を3つに分けたり、4.5帖の部屋を2つに区切っているケースが目立っている。なので2帖〜2帖半の部屋で暮らしている人が多い。このほか倉庫の一部を住居として貸しているところもあるなど、劣悪な住環境のところが増えている。そして入居者の生活保護費から利用料を天引きしたりしているのだ。

 なぜこうした無料低額宿泊所に住まなければいけないのだろうか。社会的な背景として、住むところがない人が増えていることが大きい。一方で普通の家を借りることができれば、こうした問題は起きないのだが、ホームレスや保証人がいない人たちは一般人の住宅市場から排除されている。貧困と同時に社会的に排除されている、といってもいいだろう。

 無料低額宿泊所が増えている要因として、施設開設のハードルが低いことも挙げられる。例えば空きビルを買い上げれば、簡単に運営ができる。そして施設に「住めますか?」と頼むと、すぐに泊めてくれるところが多い。行政側からすれば、そうした施設が存在していると、負担がとても少ない。なので無料低額宿泊所に依存している福祉事務所が、数多く存在しているのだ。

 また行政は、低所得者から住居に関する相談があれば、このような点を見ている。「この人はアパートで生活ができるのか」「金銭をきちんと管理できるのか」「お酒を飲まずにきちんと生活ができるのか」――。しかしその人が“お酒を飲まないと生活ができない”と判断すれば、「あなたはアパートで生活ができませんね。無料低額宿泊所で生活してください」となってしまう。つまり、行政が強制的に無料低額宿泊所に入れている実態があるのだ。

部屋を3つに区切っている無料低額宿泊所
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