一人勝ちアウディのブランディング戦略(2/3 ページ)

» 2010年04月23日 08時00分 公開
[猪口真,INSIGHT NOW!]
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強烈な比較CM

 アウディのすごみは、その徹底したクローズドなプレミアム戦略だ。

 現在、各社が顧客リレーションの新しい形として、ソーシャルネットマーケティングの確立に躍起だ。アウディの取り組みは、第7回アジア・マーケティング・エフェクティブネス賞で「一国における最高のマーケティング・キャンペーン」部門銀賞を受賞、第7回Tokyo Interactive Ad Awardでもインテグレーテッド部門でWebキャンペーンが銅賞を受賞したように、非常にユニークで力強い。顧客リレーションの中にアウディブランド(哲学)を強力なメッセージとして打ち出すことに成功している。

 日本では放送されていないが、話題となったテレビCMが2本ある。

 1本目はアウディの米国法人が実施した「The Spell(呪縛、呪文……)」というタイトルのCMだ。フェラーリにあこがれる少年やレクサス、ベンツ、 BMWに乗る人たちが登場し、退屈そうにしているところに、それぞれの車種に対応するアウディ(S4やQ5など)が現れ、全員が目を輝かせる、という内容だ。そして「アウディはBMW、ベンツ、レクサスよりも成長している」というメッセージが表示される。「ザ・スペル」とは「アウディによって呪縛は解かれた」という意味なのだろう。

The Spell - Audi

 もう1本は「Friendly Competition」というタイトルで、ひと言でいうとBMWとの比較広告だ。こちらはタイトルはおだやかだ。BMWのことをいい意味でのライバル、日本語で言うなら「お互い切磋琢磨してきた間柄」と認めているかのようにみえる。しかしメッセージは強烈だ。「S4、A6、Q5はBMWよりも優秀だ」と露骨に打ち出される。

 日本ではここまでの比較広告にはまずお目にかかることはないが、非常に明確なターゲティング戦略であることは間違いない。誰にとってもこれほど分かりやすい例はない。

Friendly Competition - Audi

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