有機ELに見る“面光源”の可能性――「第2回次世代照明技術展 ライティングジャパン」(1/2 ページ)

» 2010年04月21日 13時39分 公開
[栗田昌宜,Business Media 誠]

 次世代照明技術・関連製品の総合展示会「第2回次世代照明技術展 ライティングジャパン」が4月14日から16日までの3日間、東京ビッグサイトで開催された。LEDに続く次世代照明デバイスとして胎動し始めた有機ELを中心に、同展示会の模様をリポートする。

高輝度な点光源VS. 柔らかな拡散光の面光源

 「LED(Light Emitting Diode)」と「有機EL(Organic ElectroLuminescence)」。

 どちらも省エネで低環境負荷な次世代照明デバイスの本命と目されているが、光源として見た場合、両者には明確な相違がある。それは、LEDは半導体素子を発光体とする高輝度な点光源なのに対し、有機ELは発光層を薄膜成形した、柔らかな拡散光を発する面光源だという点だ。また、有機ELは基板にプラスチックなども使用できるため、発光面を柔軟に曲げられるといった特徴もある。

 柔らかな拡散光を発する面光源であるという有機EL照明の特徴を、自動車の車内照明やバーの室内照明、デスクライトで訴求していたのがカネカのブース。同ブースには有機EL照明を適宜配置した自動車の車内模型やバーの仮想空間が設けられ、面発光の柔らかな明かりやくつろげる色調をアピールしていた。

カネカブースに設けられていた自動車の車内模型。足下やドアコンソール、天井などに有機EL照明が設置されている
カウンターテーブルや飾り棚に有機EL照明が組み込まれたバーの仮想空間。白色(昼光色や温暖色)だけでなく、赤、橙、青、緑などの単色光も配することができるため、多彩なイメージの空間を演出できる

 有機EL照明の柔軟さを訴求していたのはロームのブース。同ブースでは、ロームも出資する有機EL照明専業会社のルミオテックが、光るアクセサリーとしてリストバンドのように手に巻き付けたり、デザイン照明器具として利用できるフレキシブル有機ELデバイス(参考出品)と、有機ELパネル、コントローラー、ACアダプターがセットになったデザインサンプルキット(8万4000円)を展示していた。

ロームのブースに展示されていたルミオテック製フレキシブル有機ELデバイス(参考出品)とデザインサンプルキット

 ガラスメーカーの立場から有機EL照明をサンプル展示していたのが日本電気硝子。同社は液晶パネル用超薄膜ガラスの製造でつちかった技術を応用して、板厚を50マイクロメートルまで薄くできるガラス製造装置を開発。ガラスは薄くすると曲がるようになるほか、ガラス本来の特徴である光学特性や耐候性、電気絶縁性、化学的安定性、ガスバリア性も備えているため、有機EL照明用の基板としても新たな可能性を秘めているという。

 同社のブースでは、板厚70マイクロメートルと50マイクロメートルのロール巻きガラスや、50マイクロメートルと100マイクロメートルの超薄膜ガラスを基板に使った有機EL照明が展示されていた。

70マイクロメートルと50マイクロメートルのロール巻きガラス。ガラスは薄くすると巻いても割れなくなる
50マイクロメートルの超薄膜ガラスを基板に使った有機EL照明。山形県産業技術振興機構有機エレクトロニクス研究所と共同開発した

 有機EL照明のちょっと変わったコンセプトと開発途上品および製造装置を展示していたのがフジテック・インターナショナル。同社は直管蛍光灯用の照明器具を流用できるガラス管タイプの有機EL照明(「リン光灯」と命名)を開発中で、まだ数センチ程度の管長ではあるが、ガラス管の内部にアルミの鏡面陰極層、有機発光層、透明陽極層を成形して300カンデラ/平方メートルの輝度で発光させることに成功したという。

 同社ではリン光灯を完全リサイクルするビジネスモデルを想定しており、リース契約でリン光灯を貸し出し、有機発光層が寿命となる1万時間で回収、ガラス管内部をエッチングではがしたのち、再度各層を形成してリースする循環モデルを構築したいとしている。

発光に成功したガラス管タイプの有機EL照明(手前)。奥のパネルは発光時の模様を撮影した写真
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