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» 2010年04月20日 08時00分 UPDATE

「行政主導の記者会見開放はメディアの危機」――フリー記者たちがアピール (4/4)

[堀内彰宏,Business Media 誠]
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警察庁が会見室まで入れてくれない

ah_kisya5.jpg ジャーナリストの寺澤有氏

寺澤有(ジャーナリスト) 僕は先月、「中井洽(ひろし)国家公安委員長の記者会見に出させてほしい」という仮処分申請を東京地裁にしました。2005年にも同じように「漆間巌警察庁長官の記者会見に出席させてほしい、それを妨害するな」という仮処分申請を東京地裁にしました。2005年に申し立てた時は警察庁と警察庁記者クラブが一体となって、「漆間巌さんの記者会見は私たち記者クラブだけのために行われているものだから、お前なんか入れてやらない」と主張しました。しかし、こちらもいろいろ徹底的に戦って、普通、仮処分申請というのは1人の裁判官が1週間くらいで決めてしまうのですが、最初は1人の裁判官だったのが3人の裁判官の合議になって、何カ月も延々とやり続けることになったのですが、その時は警察庁と警察庁記者クラブが勝ったんですね。

 民主党政権になると、警察庁長官の記者会見はなくなって、中井洽国家公安委員長の記者会見の横で安藤隆春警察庁長官が立っているという話になったのですが、今回は「その中井洽国家公安委員長の記者会見に出席させてほしい」と申し入れたのです。

 警察庁は「セキュリティ上、庁舎管理権があるので、あなたは入れません」ということだったのですが、警察庁記者クラブは2005年の件で相当傷ついたと見えまして、今回はもう最初から戦いを放棄して「どうぞ出席してください。質問も自由です」と文書で回答をくれました。それで敵が警察庁だけに絞られました。

 今、中井洽国家公安委員長が警察庁の会議室で記者会見を開いているのですが、それは一応「警察庁記者クラブが主催する」となっています。でも、主催する警察庁記者クラブが「寺澤さん、どうぞ出席してください。質問も勝手にしてください」と言っているにも関わらず、警察庁が「セキュリティや庁舎管理権の問題で、会議室まで通してあげたくない」と主張しているのです。

 「それはおかしいでしょ」ということで、そういう妨害をやめるように仮処分申請をして、今回はかなり勝てるのではないかと思ったのですが、東京地裁民事9部の葛西功洋裁判官が、「表現の自由や取材の自由は憲法に保障されているが、それよりも通せんぼする庁舎管理権の方が優先する」という驚くべき決定を出したので、今、私は東京高裁に抗告しています。まだ、東京高裁の判断は出ていませんが、これはこちらが勝つまでやるので、徹底的に何回もやります。

 一応、記者会見は警察庁記者クラブが主催していて、「寺澤さんもどうぞ」ということなので、「(警察庁に)入れてあげろ」と(警察庁記者クラブが)言ってやれば、記者クラブはこれまであっていいことは1つもなかったと思うのですが、「最後に1ついいことしたね」ということになると思うんですね。しかし彼らは言わないので、「本当は自分たちで排除したいんだけど、警察庁に排除させている」とちょっとうがった見方をする人も出てくる始末です。

 逆に言うと、東京高裁の抗告や、最高裁でも勝ったら、警察庁がどうするかというと、記者会見自体やめるという可能性も高いんですよね。例えば、今の安藤隆春警察庁長官は『週刊文春』にも書きましたが、群馬県警本部長時代に群馬県警前橋署生活安全課員らが暴力団の犯罪を見逃すなど、便宜をはかる見返りとして、拳銃の提供を受け、捜査で押収したように偽装していた事件が発覚しました。彼は本来、警察庁長官になれる人ではなかったんですね。

 その時に取材もしましたが、多分僕が目の前に来て、昔のことを延々と質問されたら嫌でしょうから、「記者会見自体をやめましょう」ということを絶対言ってきます。それから記者室にも「あんな奴が出入りするのは嫌だよ」「記者室自体を閉鎖しますよ。庁舎管理権がありますから」と言い始めますよね。だから今、記者クラブが何かできるとしたら、最後のチャンスじゃないかなと思っている次第です。

記者クラブ制度が悪用される危険性も考慮すべき

ah_kisya6.jpg 経済ジャーナリストの牧野義司氏

牧野義司(経済ジャーナリスト) 私は毎日新聞で経済記者を20年、ロイター通信で15年、その後はフリーランスで生涯現役でジャーナリストをしています。

 これだけ多くの人が日本の記者クラブ開放の問題に関心を持っておられるというのは、とてもすばらしいことだと思っています。ただ先ほど、新聞労連の豊さんが言われたように、政権交代して民主党政権になって初めてこういう問題が動き出すというのは非常に残念なことです。政治主導でなければこういうことが動かないというのは、裏返せばメディアの現場から自主的に開放しようという動きを大きなメディアが自己規制をしてしまうということに問題があるのではないかという気がしています。

 僕が毎日新聞からロイター通信に移った時、ロイター通信もAP通信と同じように閉鎖的な記者クラブ制度の枠組みの中で排除されていたのですが、僕は毎日新聞にずっといたために、「記者クラブは積極的に門戸開放すべき」という立場でいろんなアクションをとりました。

 (ロイター通信にとって)外務省の記者クラブは比較的早く門戸開放されました。しかし、それ以外の記者クラブは、旧大蔵省や日銀の経済系記者クラブは経済メディアとしてのロイター通信の活動に理解を持っていたのですが、いざ最後の段階で記者クラブの総会が開かれると、3分の2や全員一致の賛成が原則であるということから、結局、総論賛成だけど各論反対ということで問題が先送りされてしまう。

 「“国際化”とみんなが口をそろえていろんな経済記事を書いているのに、いざ自分の記者クラブの問題で外国プレスから開放問題を出された時に、何で閉じこもるんだ、言っていることとやっていることが違うじゃないか」という形で各個撃破して、最後は日銀や財務省、経産省の記者クラブなど、ほとんどの門戸を開放させました。

 それでも、内閣記者会と旧自民党政権時代の平河クラブだけは、最後まで閉鎖的でなかなか開放しませんでした。結局、オブザーバーという形で入ったのですが、非常に制約があって、記者会見では質問ができないし、官房長官懇談にも出られない。「それはおかしいじゃないか」といろいろやって、何社かはかなりのシンパシーを持ってサポートしてくれたのですが、結局先ほど申し上げたように全会一致という制約みたいなところでダメになってしまった。

 今回、こういう形でフリーの方、あるいは僕らみたいに過去(記者クラブ内の)現場にいた人間の中から、志を高く持って「記者クラブの開放をやっていこう」と言うのは大きなことだと思っていて、僕はそういう面ではこの動きが新たな反転につながることを望んでいます。

 ただ、「これからどんな行動を起こしていくか」というところで言うのははばかられるのですが、1つだけ僕が問題提起したいのは、例えば経済記者の経験から言うと、ヤクザのようなブラックジャーナリズムなんかが記者クラブ制度を利用して、企業やいろんなところに風を吹かすというようなことは大きなリスクです。そういう面では今、外務省がやっているように、取材の実績を持っているジャーナリストの人たちを入れるというように、歯止めをかけながらやっていくことも大事かなという気はしています。

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