コラム
» 2010年04月19日 08時22分 UPDATE

藤田正美の時事日想:ニホンのモノづくりは負けない……そんな自信を失うかもしれない (1/2)

中国やインドなど新興国の台頭が目立ってきているが、「日本は『物づくり』では負けない」と思っている人も多いのではないだろうか。しかしそんな自信も長続きはしないのかもしれない。その理由は……。

[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 日本が長年にわたって維持してきた世界第2位の経済大国の座。今年は中国に明け渡すことになる。そのこと自体はもう日本人にとってショックではないように見える。人口が日本の10倍もある国なのだから、GDPの総額で抜かれることは仕方がないと納得できるということなのだろう。

 「物づくり」では負けない、という自負がその裏側にある。トヨタ車のリコール問題は、その自信をぐらつかせることになったとはいえ、物づくりの技術ではまだまだ日本企業の優位は揺るがないという気持ちがあるのではないだろうか。

 しかしそんなわれわれの自信も長続きはしないかもしれない。最近で言えば、AppleのiPad。以前のiPhoneやiPodでは日本製の部品が随所に使われていたのに、今度はいわゆる新興国の部品がほとんどであるという。

 これは「ガラパゴス化」とは違う話である。要するに先進工業国は必ず新興国に追いつかれるということだ。

企業経営の新しいマスターたち

 英エコノミスト誌の最新号が興味深い特集を組んでいる。「The new masters of management」、(企業経営の新しいマスターたち)である。この記事に加えて14ページに及ぶ特集もあるので、詳しくはそれを読んでいただきたいが、要点を紹介する。特に記事の書き出しはわれわれにも非常によく分かる話だ。

 「30年前、米自動車業界の首脳たちは日本が世界の自動車産業をリードする地位に立ったことを知って愕然とした。そして日本を訪ね、そこで何が起こっているのかを知って、さらにショックを受けたのである。日本が成功したのは、労働者の賃金が安かったからでも、政府の補助金があるからでもなく、いわゆる在庫圧縮のための『カンバン方式』のおかげだった。デトロイトが寝ている間に、日本は、低賃金国から生産革新国へと変貌を遂げたのである。そして世界のあらゆる工場は『カンバン方式』を取り入れた。そしてそれができなかった工場は潰れた。

 日本で起こったこの変革は、1世紀前の米国の大量生産と並んで、革命と呼ぶにふさわしい。そして今、同じようなことが、発展途上国で起きている。

 中国は過去5年で平均10%以上、インドは8%以上の成長を遂げているが、こういった数字でさえ、現在起きている変化を表現するには十分ではない。新興経済国はもはや安い労働力と頭脳を供給することに甘んじてはいない。むしろイノベーションを生み出す基地となりつつある。通信、自動車、医療などなどで突破口を切り開いているのだ。

 新興国はこれまでの常識を覆すようなコスト削減を実現している。例えば3000ドルの自動車や300ドルのラップトップコンピュータである。これを『倹約イノベーション』と呼ぶ人もいるが、これを可能にしたのは単なる安い労働力ではない。むしろ製品の無駄を省く再設計(リデザイン)によるものである。タタ自動車のナノという世界で最も安い自動車もその例だ。

 そして分業や規模の経済といった昔ながらの法則を、医療やその他の分野に適用している。例えば、携帯を使った送金システムで世界をリードしているのはケニアだ。

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