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» 2010年04月19日 08時00分 UPDATE

それゆけ! カナモリさん:「10分1000円」をどう生かすか? 理美容業界の未来を考える (1/2)

不況の波で価格競争が激しさを増す理容業界で、10分1000円カットのQBハウスの調子が良い。そのビジネスモデルの本質は、「価格が安い」ことではないのだ。

[金森努,GLOBIS.JP]
GLOBIS.JP

それゆけ! カナモリさんとは?

グロービスで受講生に愛のムチをふるうマーケティング講師、金森努氏が森羅万象を切るコラム。街歩きや膨大な数の雑誌、書籍などから発掘したニュースを、経営理論と豊富な引き出しでひも解き、人情と感性で味付けする。そんな“金森ワールド”をご堪能下さい。

※本記事は、GLOBIS.JPにおいて、2009年4月16日に掲載されたものです。金森氏の最新の記事はGLOBIS.JPで読むことができます。


ah_kana1.jpg Creative commons.Some rights reserved.Photo by jakrapong

 2010年4月11日付日経MJ3面コラム「底流を読む」に「成熟市場の生き抜き方・運営の工夫で成長軌道に」と題してカラオケ店「ヴァリック」と、「キュービーネット」の事例が紹介されていた。キュービーネットは1000円理容室「QBハウス」を展開している。

 記事には以下のような記載があった、「理美容の業界には「10分1000円の法則」がある。10分あたりの料金設定の目安であり、このラインを下回ればそれだけ価格競争が激しいことになる」。

 つまり、QBハウスは記事にあるとおり、割安感を前面に出してはいるが、料金設定はこの法則に則っているのである。旧来の理容店がカットやシャンプー、ひげそり、それに軽妙な会話までをパッケージで売っていたものを、QBハウスはカットだけ売ることにした。施術時間を短くし、見た目の料金を安くした。無理して経費を絞り込んだわけではないという。まさしくこれぞ、成熟市場、かつ低成長経済下における「引き算の勝利の法則」であるといえる。

 QBハウスは「既存業界を圧迫する価格破壊者」のように指弾されているが、全くの言いがかりもいいところであるわけだ。その点は、コミュニケーション研究所の竹林篤実氏が同社発行のメルマガ(「4月12日の数字:時間単価10分1000円の勝負/理美容業界の法則」)で解説している。

 「(QBハウスが)条例改正によって事業存続の危機に追い込まれているのだ。要するに1000円散髪には洗髪台がないから不潔である、よって洗髪台の設置を条例によって義務づけよ、という流れが各地で起こっている。ユーザー無視、何とも理不尽ないちゃもんだと思う」との指摘はまさにその通りだ。

 むしろ、無謀な戦いを挑んでいるのは既存業者のように思える。

 筆者の事務所の近所でのこと。ある個人経営の理容店がある日、店の前に立て看板を出した。

 「当店なら、シャンプー付きで1000円」。

 1ブロック先にあるQBハウスへの対抗策だが、シャンプーまでして10分は無理だ。客がまったく取れないよりはいいだろうと覚悟を決めての「値下げ」であろう。

 しばらくすると、看板には新メニューが加わった。「総合整髪コース1500円」。つまり、ひげそりからセットまでの、従来のフルパッケージで4000円程度で提供していたものを半額以下に値引きしたことになる。確かに自宅兼用の店舗で家賃不要なら何とかやっていけるだろうが、売り上げは激減のはずだ。値下げのデフレスパイラルに自ら飛び込んだ形になる。何とか、もっとうまい方法はなかったのか。

 毛がなければ商売にならない業界で「不毛な争い」はやめて、その「10分1000円の法則」をもっと有効活用してみてはどうかと思う。

 美容業界の方にうかがったところ、美容業界は「1分100円の法則」だという。要するに同じだ。そこで、気になる記事を見かけた。

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