第31鉄 私のルーツをたどる旅――肉と桜と池上線杉山淳一の +R Style(3/4 ページ)

» 2010年04月17日 10時40分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]
ALT 御嶽山駅は新幹線の真上にある

 池上線に揺られて3つめの駅、御嶽山で降りる。改札を出る前にホームで過ごす。ここは鉄道ファンにおすすめのスポット。新幹線と新横須賀線の真上にホームがある。フェンスの網目が細かくてちょっと残念だけど、ケータイカメラで新幹線を撮れる場所だ。もう1つの鉄道スポットへ行くために、御嶽山駅で改札を出て、隣の雪が谷大塚駅まで歩く。両駅間はたったの800m、徒歩10分くらいだ。お目当ては池上線の車両基地。ところが高い壁があって、様子が見えない。残念。

洗足池で足を洗った人は誰?

ALT 石川台−洗足池間。昔はもっと桜があった

 雪が谷大塚から電車に乗って1駅、石川台で降りる。ここの線路沿いの坂道も池上線の桜の名所。線路は切り通しになり、線路をまたぐ橋がある。かつてはその向こうにも桜の木があったが、橋の架け替えの時に伐採されてしまった。この伐採された方の木が、私が物心ついて初めて見た桜であった。

 そのまま線路沿いの坂を下りていくと洗足池駅だ。その道の途中に、私が育ったアパートがあった。線路のそばには土手があって、そこに座って桜と電車を眺めたものだった。そこもいまは崩されてマンションが建っている。


ALT 筆者が高校生の頃に撮った写真。この桜も緑の電車も、今はない

 洗足池駅の向かいに、駅名の由来となった洗足池がある。この辺り、地名は千束で池の名は洗足。もともとの名は“千束池”で、日蓮さんが旅の途中で足を洗った故事にちなんで洗足池に改められた。湖畔には日蓮さんが袈裟を掛けた松も残っている。ここも本門寺同様に桜の名所で、公園の空を桜の花が埋め尽くす。こちらは町内会が仕切る縁日が出て、宴会も可能。満開の休日は地面がブルーシートの海になる。

ALT 洗足池。公園を覆い尽くす桜の花が見事

勝海舟夫妻の墓

 龍馬ブームの昨今だが、この洗足池の畔に勝海舟夫妻の墓がある。勝海舟晩年の家がこの近くにあったそうで、西郷隆盛も訪れたという。墓石のそばにある西郷隆盛留魂碑は、西郷の死を悼んで勝自身が建てたとのこと。幕末史好きなら訪れておきたいところ。公園はお花見で賑やかだが、ここはちょっと静か。勝先生も和んでおられるだろう。

ALTALT 勝海舟夫妻の墓。たしか昔はこの辺りに鹿の小屋があったような……(左)。勝海舟の別邸「洗足軒」跡地。現在は大森第六中学校の敷地になっている(右)

 洗足池駅から五反田を目指す。隣の長原駅は地下駅。線路は平坦だけど、かつては上り坂で、環状7号線の踏切があった。それを解消するために切り通しで立体交差にした。次の旗の台駅の先、荏原中延駅も地下駅。こちらは踏切を解消するために線路を潜らせた。池上線の電車の正面に扉がある理由は、これらの地下区間でトラブルがあったときに、非常口が必要だからだろう。

ALTALT 池上線の隠れた鉄道名物がこれ。筆者が子供の頃は「肝試しガード」と呼んでいた(左)。「肝試しガード」から見上げると大迫力(右)

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