意外にも具だくさんな「SELBY 35TL」の中身-コデラ的-Slow-Life-

» 2010年04月16日 09時00分 公開
[小寺信良,Business Media 誠]

 一応それなりに動作するらしい「SELBY 35TL」。ただファインダー内がホコリだらけなので、掃除ぐらいしようと思って、中身を開けてみた。資料がまったくないので、とりあえずネジを端から外していく。

 外装の構造は意外によくできている。前面、背面、底面、上面の4つのパートが組細工のようになっており、全部のネジを外さないと分解できない仕組みになっていた。中身はどうせスカスカなんだろうと思っていたら、電子部品はそれなりにあった。だがよく見ると、ほとんどがフラッシュ関係で、中央部が露出計の部品のようだ。

意外に電子部品が多い

 露出部分には可変抵抗が2つある。どうもこれはISO感度を調整するようである。このカメラはISO100、200、400が使えるが、どれかを基準にしておいて、残り2つを可変抵抗で調整してあるようだ。そんなもの、単純に2倍、4倍なのだから、固定抵抗で十分だろうと思うのだが、変なところが几帳面である。

 底部には大きなコンデンサー。これはフラッシュ点灯用に蓄電するためのものだろう。配線止めにセロハンテープが使われているが、まだ変色・硬化していない。実はそこそこ新しいのではないだろうか。もっともセロハンテープの劣化具合でしか製造年代を推測できないこと自体おかしいのだが。

底部には大きなコンデンサー

 実はシャッターボタンも、裏側からセロハンテープで留めてある。押してみるとネチャネチャという音がするなとは思っていたのだが、まさかそれがセロハンテープの糊の音だとは思っていなかった。

シャッターはセロハンテープ留め。さすが中国製

実は絞りがあった

 シャッターの構造は、四角い板が斜めから入ってくるというスタイル。フィルム巻き上げでチャージされたバネが、シャッターを押すとロックが外れ、この板を弾いて開くという、単純な仕組みである。以前、学研の二眼カメラを作ったことがあるが、仕組みはあれと同じようなものだ。

四角い板がずれるだけの簡単なシャッター

 前面のフタには、二眼のレンズが貼り付いている。よく見ると、単純な開放絞りではなく、絞りが1枚入っている。これはどうやって動くのかと観察してみたところ、単純にフラッシュを使うときのスライドスイッチによって押されて、絞りが開放になる、というだけのことであった。つまり、通常撮影では絞りがだいたい半分だから、F5.6かF8ぐらい、フラッシュ撮影時には開放になる、という仕掛けである。

スライドスイッチに押されて絞りが上がる

 それよりも前回うっかりして書くのを忘れたのだが、このカメラ、フォーカス機構がない、パンフォーカスカメラである。ワイド、テレどちらも最短距離でどれぐらいまで撮れるのか、スペックが全然分からない。いやそれ以前に、レンズ画角が何ミリかも書かれていない。

 ファインダーの画角を手持ちのカメラと比較してみたところ、ワイドは35ミリ、テレは50ミリ程度のようである。昔のカメラは50ミリがいわゆる標準レンズであり、昨今のカメラは35ミリが標準なので、言うなれば新旧の標準レンズが2つ付いているという、妙なカメラである。

 35ミリと50ミリなので、最短では80センチぐらいまでフォーカスが合うのではないかと思うが、これも撮ってみないと分からない。構造からはあんまり期待できそうにないが、どんな写りをするのだろうか。

小寺 信良

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映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作はITmedia +D LifeStyleでのコラムをまとめた「メディア進化社会」(洋泉社 amazonで購入)。


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